「もう、逃げられないぞ!」

「うるせーーー!」

「崎田恭平だな!」

「来るな!」

崎田は自分にナイフを向け、自殺しようとした。しかし、省吾はそのまま近づいていった。

「お前も俺と一緒に死ぬつもりか?」

「お前には横井真由がいるだろ? 死ぬわけにはいかないよな」

「俺なんか、死んだ方がいいんだ」

「お前は横井真由のために人を殺したんだろ? お前が死んだら真由も死ぬだろう。それでもいいのか?」

「うるせーー!!」

「それでもいいなら死ねばいい。俺も道連れになるよ」

「誰がお前なんかと死ぬかよ」

そして、崎田は泣き崩れて逮捕された。

「俺さ、もうすぐ刑事辞めるんだ。静岡で畑やるんだ。OSのメンバーもみんな一緒に来るそうだから、お前も来いよ」

「省吾、辞めなくていいよ」

紀香が言った。

「決めたんだ。俺、こいつらを守りたい。こいつらと一緒に生きて行くよ」

「……もう、頑固なんだから」

省吾は崎田を連れて車で警視庁へ向かった。紀香は崎田の車を運転した。そして到着すると、省吾は崎田の手錠を外した。

「ここから逃げようと思えば逃げることが出来るんだ。どうする? お前の意思に任せる。自首するかそれとも逃げるかだ」

「ふざけるな! 逮捕しといてなんだよ。こんなところで逃げたら格好つかないだろ? お前、刑事なんて辞めることないじゃないか? お前はお前の人生を生きろ! 俺たちのために犠牲になる必要なんてないんだ! いいか? お前はお前の人生を生きろよ!」

「わかった!」

結局、崎田は自首した。しかし、省吾は刑事を続けるのだろうか? それとも辞めるのだろうか? 

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※本記事は、2021年7月刊行の書籍『携帯エアリー』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。