5. インターネットの発展

この数十年の世界的な変化として最大なものは、インターネットの発展による変化でしょう。1969年に4つの大学それぞれが「パケット交換方式」でデータを配送する仕組みを作りました。

パケット交換方式とは、[図表1]のようにデータを小分けして宛先をつけて送り、受け取った側で、これらを再構築して読み取るシステムです。これがインターネットの始まりです。通常の電話回線では、二人がお互いに通話していると、その間の回線が専有されてほかの人が使うことができないのですが、データを小分けして宛名をつけて出せば、同じ回線の上を多数のデータが通ることができ、受け取り手のほうでデータをつなげて再構成することができます。

写真を拡大 [図表1]パケット交換による通信

また、小分けしたパケットは別々のルートを通っても構いません。中継点(ルータ)では、受け取ったパケットの宛先を見て、その宛先に向けてパケットを送るという処理をしていけば、すべてのパケットがいろいろなルートを通っても最後は宛先に到着します。受け取り手のほうで届いたパケットを順番通りに組み直します。こうすることで送信者が増えて送信量が増えた場合でも、時間はかかっても確実に相手にパケットが届くようになっています。

また、この送るパケットのデータは電話のように音声データだけに限ることがなく、あらゆるデータを0と1の数字列に直せば送ることができます。したがって、音声でも文字でも画像でも送れるようになったのです。

1981年には、コンピュータ同士が通信する手順やデータ形式の仕様(プロトコル)としてTCP/IPが作られました。TCP(Transmission Control Protocol)とは宛名のついたデータを送って受け取る手順を定めたものです。送信側からのパケットを受け取った側は、受け取り確認の応答を送信元に送ることになっています。

もし一定の時間内に受信確認が返ってこない場合には、パケットを再度送ります。受信側は受け取ったパケットを元の順序通りに揃えます。また、IP(Internet Protocol)はネットワークの約束事で、インターネットに接続したすべてのコンピュータを識別するためにIPアドレスが割り当てられます。

現在、主に使われているIPアドレスは32ビットのアドレスで、それを4つに区分して地域を表す数字、プロバイダの数字、組織の数字、そしてネットワーク内の数字といった順序で、インターネットにつなげられたすべてのコンピュータに番号が振り分けられています。

高性能なマイクロプロセッサを使ったコンピュータ(ワークステーション)のOSとして1969年にUNIXが開発されましたが、コンピュータ間を結合するローカルエリアネットワーク(LAN)が普及し、UNIXワークステーション同士のLANネットワークにおいてデータを送り合う仕組みとして始まったのがインターネットです。

インターネットという言葉は、ネットワークとネットワークをつなげるという意味から名づけられたものです。インターネットを支えているのは、光ファイバーを使った通信ケーブルやさまざまな周波数の電波を用いた無線通信技術、通信衛星などです。

インターネットというコンピュータ同士で情報を送る仕組みが作られてくると、今度はインターネット上で情報を結びつけるサービスが発展していきました。その代表が1990年代初頭にできたワールド・ワイド・ウェブ[図表2]です。これは文書と文書を結びつけるハイパーテキストから始まっています。ある文書中の文字や画像と、その文字や画像に関連する別の文書とがつながっている(リンクしている)ようにしたのです。

写真を拡大 [図表2]ワールド・ワイド・ウェブ

このような文書を作る記述方法がHTML(HyperText Markup Language)というもので、このHTML文書を解釈して画面に表示するシステムがブラウザです。そして、このHTML文書を送る通信手順がHTTP(HyperText Transfer Protocol)です。インターネット上でHTML文書を置いた場所(アドレス)を示す方式がURL(Uniform Resource Locator)です。

URLは、例えば、「http://www.se.kanazawa-u.ac.jp/mechanic/index.html」のように、通信方法(http)、Web上の住所(ドメイン)、サブディレクトリ、ファイル名の順に書かれています。

こうして文書と文書が連携して蜘蛛の巣のようにつながっていることから、同様の意味を持つ英単語のWebと呼ばれました。1990年代には、HTMLを用いたホームページ作りがブームとなりました。こうしたWebでつながった文書がWebページ、それらの集まりがWebサイトと呼ばれます。

※本記事は、2019年4月刊行の書籍『人と技術の社会責任』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。