無毛化の進行

二〇〇~一八〇万年前までのホモ属(ヒト属)は、ヒトというより類人猿に近い身なりをしていたと考えられています。しかし、ホモ・エレクトスはアフリカのサバンナの暑いところを本格的に二足歩行するようになりました。暑いと能率が落ちます。能率よく歩くためには汗をかき汗を蒸発させて余計な体熱を逃がすことが必要です。そのためには、むきだしの皮膚になる必要があります。

ヒトがチンパンジーに生えているような体毛を失いはじめたとき、青白い皮膚がむき出しになったと考えられています(現在のチンパンジーの毛の下の肌は青白くなっています)。

紫外線を遮さえぎるふさふさとした毛がなくなり、皮膚が紫外線に直接さらされるようになりますと皮膚がんの原因ともなります。また、紫外線はヒトの葉酸という重要な栄養素を破壊します。葉酸が壊れれば、生殖能力は落ちやすいので、子孫を少ししか残せないか、子孫をまったく作れなくなってしまいます。

人体において、紫外線を遮る機能は皮膚色素タンパク質であるメラニンが担います。そこで、あるときメラノコルチン受容体遺伝子が突然変異を起こして、ホモ・エレクトスの皮膚細胞で合成されるメラニン色素が多くなり皮膚の色が濃く(黒く)なりました。こうしてホモ・エレクトスは皮膚の色が黒くなって紫外線の影響を防ぐことができました。

この新しい遺伝子はダーウィンの進化論により数世代を経るうちに集団に広がっていきました。つまり、黒い肌の人が生き残る率が高く、それが代々重なっていって、ついにはすべて黒い肌になったのです。そしてアフリカ人(当時、人類はアフリカ人だけでした)はすべて黒い肌になりました。

遺伝子分析によって、そのメラノコルチン受容体遺伝子が突然変異を起こした時期は一七〇万年前でした。つまり、アフリカ人の肌が黒くなったということは無毛になったということです。結局、人間が無毛になった理由は、アフリカの炎天下を汗をかきながら(後述しますように狩りをしながら)走り回ったことから突然変異が起きて無毛の方に進化していったと考えられています。

※本記事は、2022年2月刊行の書籍『アフリカのホモ・サピエンスが天皇制国家・日本を建国するまでの歴史』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。