佐藤チーフから電話があった。お母さんは無事で容態も落ち着いたらしい。美雪宛に、今日はすまなかったねという伝言があった。美雪はチーフのお母さんが無事で本当によかったと思った。職場から歩いて三分程度のところに宅配の配送センターがある。集荷を依頼するより持ち込んだ方が早い。美雪は発送してから帰ろうと、配送センターに電話をしてオリコンに荷物を詰めた。

「手伝うよ」

水元さんが美雪に声をかけた。

「あ、大丈夫です。もうすぐ定時なので、あがってください」

美雪は笑顔で言うとコートをつかんで事務室を出た。今日初めて笑った気がした。荷物入りのオリコンを持って階段を降りきったところで柴田と鉢合わせた。

「おっ、力持ち。頑張れよ」

もう返事をするのが面倒くさい。手伝えよと思いながらうんうんとうなずいて外へ出た。急いでいたのでコートの前をしめていない。風がブラウスの胸元に刺さる。

「うう、寒い!」

ギュッと目をつぶった。

【前回の記事を読む】【小説】「ブスになるぞー」上司の理不尽な指示に機嫌を損ね…