(2)国と共に成長する企業経営の必要性

所得を倍増させるにあたり特に必要なことは、当然なことだが民間企業の努力と協力である。民間企業の経営や考え方が所得倍増に同調していただかないと実現できないことだ。

民間企業、特に大企業といわれる大きな企業は、社会的、経済的に責任を有すると思う。自社の利益のことだけ考えるということでは、企業として存在する意義が十分とはいえないだろう。

さて、バブル経済が崩壊した1990年代には、行政や民間の企業はいっせいに経費の節減に舵を切った。人件費をはじめ他のあらゆる経常経費について減額するのが当然だという経営が広く行われたのである。企業は次々に自社の生産ラインを人件費の安い外国に移していった。

企業の海外進出は1960年代から一部の企業で始まっていたのだが、当時においては海外に自社の販売拠点や生産拠点を作ることが大きな目的であった。

しかし、バブル崩壊後の海外進出においては、安い労働力を求めて経費を圧縮することを目的にしたものが大変多くなった。これをきっかけに日本の国力が大きく低下していくのである。

まず、多くの企業が海外に進出したために、日本国内の雇用が減っていった。このことにより、職に就くことができない人が増えた。各企業が経費の節減を行い、特に人件費を削り続けたために、国民の所得は減少していった。また、企業によっては人員削減を続け失業者が溢れた。これらのことが常態化することにより暗黒の30年が始まったのである。

物価が下がり企業の業績が悪化し、国民の所得が下がり、また物価の下落を招くというデフレスパイラルと呼ばれる不況が日本をおおった。

私は、経済については基本的に拡大路線で進めないと健全な成長が行われないと考えている。全体の経済活動がマイナスシーリングの中で行われると弊害が出てくる。民間企業については余裕のある予算というもののほうが、より利益を生むような気がしてならない。