第3章 嵐の前の静けさ

また、1か月経った。裂けているのは、4cm、まだ進んでいなかった。ふくよかなのを気にしなかった母がどうしたらいいか悩んでいた。食べていないのに体重がどんどん重たくなった。痩せたいのにアフリカの栄養失調の子供たちのようにお腹がどんどん膨れていった。子供できた? 真剣に思った。

母も一応念のため検査していたらしい。おかしいので通っていた病院に何度も抗議したが受け入れられなかった。藪医者だった。

久々に家に戻っていると突然、電話がかかってきて、何か食べたいと父に伝えてという電話だった。自分ではもう動けず大声もだせない。同居の父さえ呼べないのだ。

私としたことが、家に帰っていたので、気づけなかった。

電話の当日は父におかゆを作ってもらおうと思い、父にコンビニでおかゆがあるから買ってきて皿に移してラップをふんわりかけてレンジでチンして、と言ったのですが、それすらうまくいかず。父が家事ゼロ人間だったのを忘れていた。

あわててとっても美味しいおかゆをネットで取り寄せて当日発送をお願いし、翌日に届き、私も実家に戻った。母は翌日の「高級おかゆ、美味しい」っと絶賛していた。

母に聞くとずっと食べてないことを知った。父に聞くと、母が食欲がないって言ってたから、自分だけお弁当を買って食べていたそう。何か食べられるものがないか、聞くことを思いつかなかったようだ。看護のかの字もできなかったようだ。

その間、母は、土石流のようなものを吐いていた。この泥水みたいなのを洗面器に入れてトイレに繰り返し流しに行った。これぐらいなら、父にもなんとかこなせる作業だった。

父は父でそれなりに生活しよう考えていたようで、洗濯をしたいけど洗濯機が動かないと聞いて帰ってみると、元の電源が外してあった。こんな小さな出来事で、片道3時間、かかってこれでは、体がもたない。

父も何かしようと父なりに頑張っていた。

あるあるだが、レンジで殻のままの卵を加熱して破裂させた。修理できないレベルなので、買い直した。往復6時間費用もばかにならないが、でも父が何かを始めたら応援するしかないでしょう!

おかしいなぁ? 昔、2年も料理学校に行っていたのは、誰だっけ。と、言ったら父は食器洗い担当だったと言い訳した。

次は、なんと料理にチャレンジした。カレーを作ったから、ゆっくり食べようと連絡があり炊飯器にカレーができてるよって言われて、炊飯器を開けたら米の上にレトルトカレーが袋のまま2個置いてあった。

食べても大丈夫なのかなと思いつつも初の父料理だったので、ありがたくいただいた。

この時電子レンジの注意点や使い方を教えたら、便利なので、すぐ使い始めた。しかし、電子レンジで、金属の缶詰のふたを開け、そのままスイッチを押した。壊れなかったのが幸いだった。

食べないのに段々膨らむお腹。食べても下から小便も出ず、土石流みたいに口から出てくる。

おかしすぎる。

※本記事は、2022年2月刊行の書籍『ドーナツの穴』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。