23 なめ子 20xx/xx/xxxx:xx

身バレはいやだけど、それほど罪悪感はない。一番古い職業だというし、けっこう世の中のためになっている、と思ってる。(えっ、不細工!これじゃ女にモテないだろう)って男性が「筆おろししてくれ」と来たこともある。

奥さんに「あなたとはしなくない。風俗に行って」と言われ、子どもが可愛くて家庭を壊したり離婚をしたくないから来た男性もいる。

「いやぁ、このことは妻や彼女に話せないんだよね」

とべつに好きな女性ができて欲望と理性の葛藤で悩んでいるとか、そんな話をゆっくり聞いてもらいに来る男性。

「もうこの年だからダメだけど、若い娘の身体に触りたい」

と来るお爺ちゃんとか、いろいろ。

奥さんに「風俗に行って」と言われたってことは、この職業を有難がっている女性もいるってことでしょ。浮気されるより風俗に行ってもらったほうがいいんじゃない?お客様も喜ぶし店も儲かる、私も稼げる。ウィンウィンの関係。電マのお客様とはウィ~ン、ウィ~ン、ウィ~ンの関係(笑)。

24 シンデレラ 20xx/xx/xxxx:xx

それは自分の罪悪感を隠すための言い訳じゃないの!

セックスって快楽を求める手段じゃなく、愛し合う男女が求めあう神聖な行為だと私は思ってるから……たぶん普通の人はそう思っているわ。私は好きな男としかできないわ。

いくらお金をもらっても身体を売るなんて、できない。私の理想はね、できれば初夜に処女を捧げたい。

一人の男性を愛してその男性に処女を捧げ、その人と幸せな家庭を築いて子どもを産んで、心の裏切りとかなくて、だからなめ子ちゃんの生き方はわからない。それって男のおもちゃじゃないの!

25 なめ子 20xx/xx/xxxx:xx

時給1万5千円だもの、相当なことはしますよ。ソープ嬢相手じゃなきゃ一生女を抱けない男もいるだろうし、性犯罪を防いでいるかも……。

フランス海軍の支援を受けることに成功してオスマン帝国の侵略からベネチアを救ったベロニカという高級娼婦がいた。

『娼婦ベロニカ』って映画で知ったの。16世紀のベネチアでは女性は男性の所有物で、結婚は所有者が父親から別の男性に移ることだったの。

女性は家事と育児ができればよく、教養は望まれなかったから図書館は女人禁制だった。ただし、社交界で男性貴族と会話したり即興詩を競い合う高級娼婦だけは図書館への出入りを許されていた。高級娼婦のみに自由があったの。

『肉体の門』って映画では戦争未亡人になった女性たちが逞しく生きる姿が描かれていたりとか時代や地域によって娼婦に対する見方は違うはずよ。

一番古い職業でいまでも続いているのは必要だから、だと思ってるわ。

セックスの相性がいいからって馴染みのソープ嬢と結婚した人もいる。結婚したはいいがセックスの相性が悪いって最悪だと思う。

女には誰だって娼婦願望があると思うの。

娼婦って男のおもちゃのようだけど、同時に女の魅力全開で男を魅了してもいる。ジワリジワリ男を絶頂の縁まで追い込んで、逝かせる。男が私の魅力やテクニックでメロメロになる。

その瞬間の女としての喜び、わかるかな?

女に生まれてこんな幸せなことはない。

水商売みたいにやらせる振りして色気で男を籠絡するわけじゃないから男の人生を狂わせるわけでもないし、水商売みたいに個人的に会うことは絶対なく、おねだりもしない。高い時給もらって身体で稼ぐだけ。

決心するまでは迷いもあったわよ。決断するときってなにか後押しするものがあるでしょ。私はなにがソープ嬢になることを後押ししたのかわからない。いまそれを考えている。

【前回の記事を読む】女一人で生活できる“芸者”になりたいと告げた私…置屋のお母さんが放った一言とは

※本記事は、2022年2月刊行の書籍『Beautiful Moments UYUNI』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。