「おまえ……」

ぐっと肩を(つか)まれた。優哉だ。

「今日のところは見逃してやれ。最初から揉めていたら、先行き不安だろう」

今日は優哉に免じて許してやるが、いずれ絶対直してやる。

「ひとまず! 引継ぎ資料を持ち帰って読んでくれ。次の活動は始業式の日の放課後」

俺は努めて淡々と語った。なめられないようにしなくては。

「生徒会って響き、なんかかっこいいねー、これから楽しみだねー」

「そうですね、越智センパイ」

「しゅうちゃんでいいよ、だいちゃん」

「えー、じゃあ、秀サン!」

いちゃいちゃすんなっ、越智! 岩崎!

「なんやわしらにしかできんことしたいなぁ」

簡単に言うなっ、土居!

「……」

見下ろすなっ、野間!

「今日は解散!!」

「葵、疲れてるな」

生徒会室には、俺と優哉だけになった。

「なんなんだ、あいつら。どうやって当選したんだ。越智なんか完全なタレント議員だろ」

「タレント議員か、なかなかおもしろいこと言うな」

優哉がふっと笑いを漏らした口元にこぶしを添える。

「笑いごとじゃねえよ」

俺はもうため息しか出なかった。

「それと野間。なんだ、あの乱れた服装。校則違反だろ」

第一ボタンまできっちり閉めないと落ち着かない俺には、さっぱり分からない態度。道枝中は厳しく取り締まらなくても平和だから、野間みたいなやつは悪目立ちするだけだ。

「でも野間って、女子から人気あるみたいだよ」

優哉はいったいどこから情報を得ているんだ。不良はモテる? そんな時代かよ。どいつもこいつも。生徒会選挙は人気投票じゃない。先輩役員は本当にかっこいい人たちだった。しっかりしていて、常にリーダーや長を務めるような人の集まりだった。

この生徒会、大丈夫か?

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※本記事は、2021年11月刊行の書籍『松岡葵の生徒会日記』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。