【前回の記事を読む】凄絶な母親からのDV…大人になった娘が初めて気づいた「自分の心」

変わりたいという想いと変わることへの恐れ

毒親に虐げられて、その日その日を過ごすのに精いっぱいだった日々から、成長するにつれてそういう生活に疑問を持ち、何とかならないか、何とかしたいという気持ちを持ち始めた女性たちがいた。

つらい日々であったが、さまざまな人との出会いや自分の努力によって、彼女らは毒親である母に対抗する力を少しずつつけていったのである。彼女らの力はいまだひ弱く、自分を支配する母親から脱するには何かが足りなかった。たまたまの出会いにより、カウンセリングにその何かを求めた彼女たちは、ようやくに母親から距離を取ることを得た。

しかし──

(1)彼女らが得たものは何か

彼女らがここで得たものは何だろうか。

それまで彼女らは、毒親と一緒に暮らすしかない状態であった。その状態では、当然、毒親からの攻撃に毎日身をさらすことになる。事例1の女性のように高校時代に寮に入ったとしても、毒親の意向次第では、本人の意思とは関係なく実家に連れ戻されてしまう。しかし、勉学に励み就職して経済力をつけると、一人暮らしが可能となる。ここではじめて、自分から物理的な距離を保つことができるようになる。毒親の毒に、毎日身をさらさなくて済むようになるのだ。

このことは生活に余裕を生み出し、その余裕はわたしに、自分が何者か、何をしたい人間なのかということを考える時間を与えてくれる。このことが、物理的な距離を取ることの意味である。余裕が生まれるのだ。この余裕というものが、彼女らがここで得たものに他ならない。そしてそれが次のステップにつながることになる。