第二章 仮説社会で生きる欧米人

本質を掴む思考スタイル

本質を掴むことは、難しい面があります。だが、本質の捉え方の違いは、欧米人との思考、行動の違いに繫がり色々な面でミゾを生むことを私たちは理解する必要があります。

日本人が使う本質の意味は、「本質は現象の背後にあって、よく観察すれば見えるもの」と位置づけられています。この説は日本人の本質観を突いており、本質の意味をわかりやすく、端的に表現していると思います。

ところが、欧米人は「本質は見えないが、存在する」と捉えています。日欧の本質に関する違いは、「本質はよく観察すれば見えるとする日本人」、「本質は見えないが、存在するとする欧米人」に分かれますが、ここに日本人と欧米人の本質への捉え方の違いの基があります。

普通に考えると、根本原理や本質、さらに神は、誰の目にも見えるはずがありません。しかし、考えてみると、日本人の「よく観察すれば本質が見える」とする考えは、おかしな理屈になります。ところが、欧米人は見えないはずの本質や神を、「深い思惟と直観で捉えることができる」としています。

この考えも私達日本人には分かり難い説明になります。見えない本質を深い思惟と直観で捉えることが出来るとする考えを追い求めてみると、哲学に行き当ります。

哲学は、生きる根本原理を究める学問と位置づけられています。哲学と本質、そして神、三つは対象が見えない点で共通点があります。見えない本質や哲学を深い思惟と、直観で求めようとする欧米人。やはり日本人の私達と彼等は、違う思考法となっています。

そこで、「本質は見えないが存在する」とする欧米人がどのような思考法で本質を捉えているかを私の仮説を交えて三つの図【図表1逐次思考、図表2直観思考、図表3本質から考える思考】で取り纏め作成してみましたのでお付き合いください。

写真を拡大 [図表1] 逐次思考

写真を拡大 [図表2] 直観思考
写真を拡大 [図表3] 本質から考える思考

【図表1】の逐次思考は、深い思考の積み重ねで本質を掴む法となります。この思考法は、一見すると日本人の視覚、経験でことの正否を判断する帰納法と類似性があるかに見えますが、別ものです。

逐次思考は、求めたB₁、C₂をイチ々箇条書きに理解し、覚えるのでなく、深く考えてB₁、次にC₂と順次捉え、最後に本質のD₃に到達する思考法となります。見えない本質を深く考えて本質を逐次掴むようになれば、今度はB₁、C₂、を省略して、【図表2】のように直接、直観思考でD₃の本質を掴むことが可能となります。

直観思考も日本人が得意とする直感に類似性があるかに見えます。しかし直感は刑事が犯人を逮捕する場合の勘と同じようなものです。だが、直感で本質を掴むことは叶わないものです。

本質は勘でなく深く思惟する直観です。本質を直観で掴むことができるようになると、【図表3】のように逆に本質から考え、本質を掴むことが可能となります。

この思考法は、素直な心になり自分と本質を一体化する必要があります。自分を無にし、見えない本質と自分を一体化し、本質にどんな意があり、どんな働きをするかを思惟し本質を直観で採り入れる法となります。例えば神を例に説明しますと、神は、いくら考えても見えるものではありません。自分を無にして神の意を採り入れることが出来ても、それは推論となります。それ故【図表3】で得た推論は、本質に近い「仮説」となります。

このことから、見えない本質や神が分ると言うことは、分かった筈の本質や神が「仮説」だ、と理解する必要があります。【図表3】は超難解な手法になりますがスピードがあり、欧米人が本質を、掴む時の基本スタイルになっています。欧米人の思考、行動のスタイルは、本質を深い思惟で掴み、仮説を前提にして演繹法で説明していると言っても過言ではありません。

具体的にこの流れを説明してみますと、キリスト教の三位一体説は、形而上学で求めた霊という概念(仮説)を演繹法で説明しています。三位一体図も、演繹法で作図した図面となっています。欧米から発祥した哲学も深い思惟と演繹法から成り立っています。

今から、二千四百年前に起こったギリシャ哲学、その哲学の祖の一人とされる、ソクラテスは、演繹法に類似した思考で人間の理想的な生き方を求めています。ソクラテスは、真・善・美を考えるに当り、人間の理想的、普遍的な生き方を「イデア」と位置づけ、イデアと人間の欲動を対比して、愛とは、美とは何かを追い求めています。

ソクラテスの哲学は、普遍的な考えのイデアを前提にして人間の生きる根本原理を求めており、一方演繹法は本質に近い仮説を出発点にして現象をアレ・コレ比較、推論して結論を求めています。哲学と演繹法の二つは類似性の強い思考法ですが、欧米人の思考スタイルの基本になっています。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『特性を活かして生きる』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。