それから私は、仕事場となる事務所に機材を必要最小限度にそろえました。パソコンとコピー機、机といす、電話(固定電話)は携帯だけでは信用がないので、自宅兼用にしました。

できたばかりのこの会社に、どうやって注文がくるのだろう? どうしたらいいのだろうと、一生懸命考えました。考えるなかで、一番経費が掛からないだろうと思った手段がインターネットでした。

当時はまだ「不動産をネットで販売する」ということはあまり考えられないころでした。最初は経費が掛からないだけに仕事の成果もあまり期待はできないと思われましたが、「やるしかない!」と思って着手しました。そんなわけで私は「インターネット不動産」として会社を始めることにしたのです。

当時はまだ珍しかったので、予想していたよりも反響があり、驚きと嬉しさがこみ上げたものです。初めてお客様から問い合わせがあったとき、これまで接客は何度も経験してきたのに、ふわふわして、うまく回答できたかなと何度も反省したりして(笑)。

決めてくれるのかもわからないのに、こちらからか細い声で、お客様に「いかがでしょうか?」と折り返し聞いたりしたものです。

会社を始めたばかりのころ、出来立てのホームページには、情報も少なくて、役に立ちそうなことを、どうやって盛り込んだらいいのかとか、物件数を一つでも多くと思っても、一つ打ち込むだけで時間がかかります。

パソコンに不慣れな私は、パソコンの使い方から教わらなければいけない状態でした。教室にも通って少し基本は教わったものの、じれったいほど時間をかけて、一つ二つ……と作り上げました。毎晩深夜に及びました。

やれやれともう終わろうとして、最後に一言、ブログを書きます。まだお客様も少ないので、一日のうちの一番効率良く動ける時間を選んで、ブログを書くスケジュールを立てました。荒野のような道なき道をこれから走っていく! という意気込みと不安がまじって、耐えきれないほどのストレスが襲いました。

私は実業家の斎藤一人さんの「できる、できる」を思わず何度も口走るようになっていました……。そんなこともあった私ですが、今も神社には毎年新たな気持ちでお参りしています。次の年もまた無事をお祈りします。道なき道を、細くずっと歩いて行けますように……まるで絹糸のようにしなやかに……(かっこ良すぎ? 笑)

神社の帰り、下り階段の足取りが不思議に軽く感じられました。心地良い風が足元から吹いてくるのを感じます。

※本記事は、2022年4月刊行の書籍『ゆっくりいそぐ わたしの生き方』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。