Wish You Were Here

男はリクシャーを降りて、大きく伸びをして、腰を左右にひねった。そして一つ息を吐くと、駅の高架下に向かって歩いた。うす暗いその場所では小さな屋台が軒をつらねており、その一つで果物を扱っている。男は、顔見知りの果物屋の女性に、どうも、というように笑いかけた。

果物屋の女性は二十代半ばくらいに見えるが、まだ少女の面影を残していた。右の頬に豆粒大のほくろがある。老夫婦が忙しそうに店の切り盛りをしている横で丸椅子に座り、いつも頬杖をついて、ビーチサンダルを爪先に引っかけ、携帯電話をのぞき込んでいる。男に笑いかけられると、女性は、いきなり、軽蔑したような視線を男に投げつけた。いつものことだ。

それでも、男が何も言わない間に果物の山からイチジクを一つ取って、ナイフで二つに切ってから、男に投げて寄越した。男はそれを器用に受け取って、ズボンのポケットから一ルピーの硬貨を渡そうとしたが、硬貨が真っ黒なのに気づいて、急いでズボンで拭いた。ごめん、というように笑いながら硬貨を差し出すと、女性はじろりと睨んで、フンと鼻で笑ってコインをふんだくった。そしてまた、携帯電話をのぞきこむようにして、定位置に戻る。

男は、リクシャーの運転席に戻り、ハンドルに両脚を上げて、二切れになったイチジクを眺めた。女性が選ぶ果物は、いつも大きくてしっかり熟している。携帯電話を取り出し、「自分」の「My Life」のアカウントを開いた。

一か月前の、インド政府の経済政策に関する「自分」の投稿を眺める。その投稿にはいくつかの「Good!」がついており、その中には先ほどの果物屋の女性もいる。アイコンの画像でわかった。同じ右の頬にほくろがある。

女性はこうコメントしている。あなたの投稿はいつも私の感性を揺さぶります。揺さぶられたのは男の方も同じだった。自分の投稿が誰かの感性に届いた。それは新鮮な驚きだったし、うれしかった。

男は、「My Life」のユダヤ人としてではなく、リクシャーの運転手である現実の自分として、直接、女性に言いたくなった。どんな分野に興味があるのか、どのくらい興味を深めてきたのか、何につながるかはわからないけど、時々一緒に議論できないだろうか……。何度か果物屋で女性に話しかけようとしたが、いつもけんもほろろだ。だが、最近はまだいい方で、最初の頃はホースの水をかけられそうになったこともある。