「これでおおよその疑問が解けたと思いますけど、どうでしょう。まあ、とりあえずはそういうわけです。それ以外の質問はありませんか」明日美が口をもぐもぐ動かしながら手を挙げている。もう一方の手にはそれまでになかったはずのスナック菓子が握られていた。

いつの間に持ってきたものか、佳津彦が愕然とした表情で菓子を指差したまま固まってしまっている。「姫様、私に何かしませんでしたか、急にお菓子が現れたんです。おかしいの!」

「では、お菓子がおかしいという話ですが、それはおかしいですね……。ええっと、明日美、よく聞きなさい、あなたにも我が一族が持っている特殊能力が備わっているのです。個人差があるとはいえ、あなたの力は驚くほど強力です。

それに気づいた私は私の力でそれを引き出してさらに増幅しました。あなたはすでに私の力を凌駕しているのですよ。ただし、その力をまだ上手く制御できないでいるのが本当のところであり、まだまだ私の力が必要だということです。

注目すべきは高い戦闘能力で、私が今までに出会った超能力者たちを圧倒しています。最強と言ってもいいでしょう。お菓子程度を瞬間移動させるなど取るに足らないことですよ。まだまだこれからも進化は続くことでしょう。

あとは佳津彦の能力についてですが、古い文献からその時代の出来事に関する詳細な事情までも読み取る力に長けています。その力も増幅して置きました。それもそれで素晴らしい能力なのですが、それ以外これといって注目すべき物はないようですね。

これらの事情を踏まえて佳津彦も良く聞いてもらいたいのです。

これは天見家に課せられた宿命です。これから先にさまざまな苦難が待ち受けていると覚悟しておいてちょうだい。それは我が一族には倒さなければならない宿敵がいて、その敵は私の覚醒を察知していて、こちらがやらなければやられるだけで、今度は逃げるわけにはいきません。

とても強力な敵で倒すには明日美の力が必要となります。明日美、あなたの首元にある勾玉には私の魂があり、力を導きともにこの先、陰の力を持つ者たちと戦い、せん滅していかなければ我々に未来はないと思いなさい。

佳津彦には明日美を借りることに承諾をしてもらわなければなりませんし、不測の事態に備えて明日美の従姉妹の明日香の招集も考慮しておかなければなりませんね。

それと時子にもよろしく伝えてちょうだい。さらに銅鏡と銅鐸の機能は勾玉に移しましたので、引き続き保管をしておいてちょうだい。自宅と祠の修理もしなくてはならないし、疑似古墳の調査もあるし、まだまだ重要な役割が増えるはずなので大変ですよ。頼みましたよ」

山積みの仕事に困惑したものの、卑弥呼の役に立つことは家訓でもあり、佳津彦にとって快楽に等しい。

故に当然の返答が、「明日美も天見家の人間です。そのくらいはわきまえているはずです。私も覚悟はできていますし、時子の件をはじめ、すべて承知しました」ということである。

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