決意

あれからいろいろ考えたけれど、わたしの中の答えは出ない。それでも、わたしの気持ちとやるべきことは決まった。あとはそれを行動で示すだけだ。

剣崎くんには感謝している。あのとき、もし会わなかったら今までずっと迷っていただろう。今から行うことが失敗したとしても、あとできちんとお礼を言おう。

胸に手を当てればかすかに感じる温かさ。安心からくるものだ。昔とは違い、今のわたしは独りではない。弘樹がいる。今まで険悪だった家族とだって、きちんと上手くいっている。

この気持ちを弘樹にきちんと伝えなければ……。

わたしは今、駅ビルの出入り口に立っている。ちらと時計を見る。待ち合わせの時間にはまだ早い。自分がこれからしようとすることに緊張しちゃったせいで、昨日もよく眠れずに諦めて早出(はやで)した。

はやく来ないかなー………。

なんて考えていたら、1人の男性がこっちに向かって走ってきているのが見える。すごい剣幕だ。急いでいるのか? なんて思ったが違う。手には刃物。明らかにわたしを狙っている。

え!?

突然のことに驚いたわたしは足がすくんで動けなくなってしまった。迫り来る男、立ち尽くすわたし。その間に突然遮るように割って入る1人の男性。

「剣崎くん!?」

でもなんで、ここに? それよりなぜいつもわたしのためにそこまでするんだろう……。つい最近まで赤の他人だったのに。

そんなことより、このままでは剣崎くんが刺されてしまう。そんなのはダメだ。今までいろいろしてもらった。危ないところを助けてくれた。迷っているわたしに道を指し示してくれた。

だからわたしはここにいる。弘樹に告白するために。わたしの背中を押してくれた、恩人の彼にわたしはまだ何も返せていない。

剣崎くんの手を掴み、無理やり引き離す。入れ替わるように刃物を持った男がわたしを突き飛ばす。

「ウソだ!! そんな…………!!」

剣崎くんがわたしの元へすごい形相(ちょっと怖い)で駆け寄ると、刃物が刺さった腹部まわりを脱いだ上着で覆う。すごく痛い。お腹が熱い。口を開くが、腹に力が入らず、吐き出す声は霞んで消えてしまう。

「な、…んで…………ここに」

「予感がして、見張っていた。案の定だ。なのに、なぜ俺を庇った!?」

眉間の皺がさらに濃くなる。明らかにわたしに怒っている。それに関して言えば、わたしもかなり怒ってるよ? なんで盾になろうとしたの?

「たま……には、返さない…………と」

ふふと力なく笑う。辛そうな顔を見たくなくて、心配させたくなくて笑ってみせるが、それが逆に不安にさせてしまったようだ。

「そんなことは、どうでもいい! 生きてさえいれば、無事でさえいてくれたら……それで、いい……」

剣崎くんが涙を流す。その顔があのときの弘樹とかぶって見える。

【前回の記事を読む】昨日からの考え事を友人に話すと…「どうでもよくないか?」