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気になり出すともうどうにもならなくなる。この謎を解いてみたい。俺に行動を促すのは、多分その気にしいの性分に違いなかった。 

基本大雑把で思慮深くもなく、出世など気にもしないくせに、オモチャの知恵の輪ができなかったりすると落ち着かず、意地でも解いてみようとする。そんななんの儲けにもならない性分だ。

俺は自分を郷土愛に溢れた人間だと思ったことなど一度もないし、あったとしてもごくありふれたものしか持ち合わせていない。ほどほどの郷土愛と、変なところで気にしいの性分が、俺をいたたまれなくさせ、行動へと突き動かすのだ。

何か手掛かりがほしい。この知恵の輪、松平市に起きている謎のパズルを解く手掛かりが……。

それで思いついたのが、市役所の建築課に問い合わせてみる、という方法だった。市内で建てられる全ての建物が、そこの許可を得て初めて建てることが可能となるはずだ。五年前にマイホームを建てた時も、建築課に提出する確認申請の用紙に、俺はいくつも印鑑を押させられたものだ。建築課に問い合わせてみれば、なぜ建物が建たないのか、それを解明するなんらかのヒントが得られるかもしれない。

市のホームページを検索すると、電話番号に辿り着いた。

情報の宝庫である建築課に問い合わせることは、建設屋ではなくしがない置き薬の営業である俺にとって、いささか抵抗を感じないわけにはいかなかったが、なに、ちゃんと税金を払っている善良な市民が役所に問い合わせして何が悪い、と己を鼓舞し、勇気を出して電話を掛けてみた。営業途中、公園の駐車場に車を停めて。

なに、善良な社員なのだから、そのくらいのサボリは許されたっていい。

※本記事は、2022年2月刊行の書籍『草取物語』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。