第一章 子どもの地頭力を鍛えるためのトヨタ式

絵本作戦について

そして次のステップは、感想文などのアウトプットである。自分の考えを総括しながら、他人に「要するに、○○だよね」と、比喩表現を交えて簡潔に伝えるための、心に響く要約力がつく。このアウトプット作業が、とても重要である。

各種の読書作文コンクールや俳句コンテストに投稿するのも楽しい。締切日までに、短期間でまとめ切る粘り強い集中力がつく。入賞すれば、雑誌に名前が掲載されるし、図書カードなどが郵送されてきて、とてもうれしい。ギュッと荒っぽくハグして、褒めてあげよう。愛情ホルモンが分泌されて、さらに愛おしくなる。

多面的な視野で物事の本質を見極める力をつけられれば、眩暈(めまい)を感じるほどの膨大な情報過多のネット社会のなかで氾濫する、ガラクタ情報の波に溺れなくなる。時が経過すると、自発的に小説を読破するようになった。

AIには不可能な、行間を読み解ける洞察力を有した頼もしいパーソンになってほしい。

東京大学の入試前の全国統一東大・京大模擬テストで、総合二位、現代国語の科目二位の成績をとったのも、絵本作戦による国語力の体得が功を奏したと断言する。まぐれで、偏差値80超の全国二位の成績は、絶対にとれない。

トヨタでは、「平準化」という考え方を最重視している。「山を崩して谷を埋める」ということ、つまりピークをつくらない。「バラつきは、諸悪の根源」と考える。

一日に〇・二%のカイゼンを根気よく繰り返せば、一年後には一〇〇が二〇七と二倍以上となり、二年後には四三〇と大幅アップする。逆に、一日に〇・二%ダウンすると一年後には四十八に半減してしまう。つまり、「カイゼンは、質より量」にこだわる。テストは百点が上限であるが、カイゼンをエンドレスに継続すれば、数字は青天井となる。

ある実業家が、大学の卒業式での伝説のスピーチで語られた、日々の小さな取り組みがいずれはとんでもないことにつながるという、点と点をつなぐ、コネクティングドッツである。

よって、「絵本は、毎日少しずつでも読む!」のだ。週末の三十分だけでは、残念ながら足りない。「継続は力なり」を信じて、たった五分でも毎日続けたい。少し飽きたら、気分転換として、ベランダに出て夜風に当たりながら、月の満ち欠けの観察をしてみよう。

人口あたりの図書館数No1の山梨県は、健康寿命が全国No1である。NHKスペシャルの『AIに聞いてみた』の特集で、読書×健康寿命の相関関係が導かれた。

読書は、バランスの良い食事や適度の運動と同等に、健康にも大きく寄与するそうだ。健康管理に関しては、受験勉強はもちろんのこと、人間生活のすべてのバックボーンであるのは、言うまでもない。正に、読書は心の栄養素であると言える。

また子どもの成長とともに、図書館や街の本屋さんに親子で一緒に行く機会を、多くつくった。

図書館では、何気ない日常生活で抱いた純粋な疑問を、図鑑などの書籍を親子で一緒になって探し出し、解決したい。例えば、公園で採取した珍しい昆虫や植物や岩石の名前とか。宝探しのように、答えを見つけ出したときの驚きと喜びの感動を親子で味わいたい。自然に、学習意識が高まりリサーチ力がつく。国立国会図書館で、子どもの誕生した日の主要新聞の一面記事を入手するのも、おもしろい。そして図書館の匂いと居心地の良さを心に刻もう。