「うちの子に子供の頃から本を読ませることをしていなかったためでしょうか」

「そうかもしれません。学校では友達もいるようですので、レポートの書き方を教えてもらえばいいと思うのです。または実習担当の専任教員に質問すれば良いのにと思っています。最近、何か悩みでもあるようですか?」

「学校や実習病院へは、自宅からバイクで通学していますが、何も変わったことはございません」

「ご家族は何人ですか」「四人家族です。二人兄弟で兄がおりますが、社会人として働いており、結婚して市外にいます。今は、親と娘の三人で生活しています」

「お母様のお仕事は何ですか」

「仕事は常勤でスーパーマーケットのレジをしています」

国田は話し上手であったため、お子様に彼氏はいますかなどのプライバシーに及ぶ質問を平気でして、私に任せてくれれば、看護師になるまでの面倒を見て上げますよと言って、保護者からの絶対的信頼を得ようと画策した。

これも国田の教員としての賢い術かもしれない。残りの六人の保護者にも個人的に同様の話をして信頼を得た。

【前回の記事を読む】看護師国家試験を合格させるため…国田がとった厳しい方針とは

※本記事は、2021年11月刊行の書籍『【文庫改訂版】女帝看護教員』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。