親バカチャンリンもいいところですね。家で電話を待っていても落ち着かず、ベランダから下の道をのぞいていると、坂道をとことこ歩いてくる子の姿が見えました。次男でした。あ、と思い転がるように階段をおりて歩道に出ました。もう、嬉しくて、嬉しくて、まるでドラマのワンシーンみたいにしゃがんで両手を広げ抱きかかえてしまいました。

どこにいたの? 改めて聞いてみると向かいの棟の1歳年上の子のお宅でお昼をいただいたとのこと。そういえば、たまに砂場で遊んでいるのを見かけたことはありますが、親同士もあまり話したことはなく、まさか家まで遊びに行くなんて思いもよりませんでした。

また、お昼を食べさせる場合、おたがいに一本電話を入れるというのが暗黙の了解のようになっていたので、ちょっとうらめしい気持ちにもなりました。

「ごちそうになったみたいで、すみませんでした」

「いいんですよ。お昼一緒に食べる? って聞いたら、うん、と言うので」

「そうだったんですね。ありがとうございます」

「110番を……」という言葉は呑み込み、ていねいに礼を言って帰ってきました。その頃からファミコンやテレビゲーム機で遊ぶようになりました。

なんだか昔の遊びとまったく違うので、こんなんで遊んだ子どもたちは大人になったらどうなるんだろうと、空恐ろしいような気持ちにもなりました。

よほどファミコン禁止にしようかとも思いましたが、よくよく考えれば、よそのお子さんたちがそんなもので遊んで大人になり、コンピューター頭脳みたいなものを身につけた新人類になるなら、うちの子たちだけやらせないでアナログ人間のままだと世の中についていくこともできなくなるでしょうと、まあ、そんな風に思って、あきらめてというか、黙認っていうか、目をつぶることにしました。それでも不思議なもんですね。

その頃の子たちが、今はみんな社会を支える大人になっているのですが、私たちの頃よりもっと良識があって、エコロジストとか自然派とかになっていて、30代、40代にそういう人が多いそうですが、ひょうたんから駒みたいに思えます……。人間って本当に不思議ですね。

※本記事は、2019年1月刊行の書籍『 若葉台団地』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。