1

私たちは、日が出ている間に会ったことがなかった。いつも夜のとばりが降りた頃に落ちあって、互いに相手のことを探り合い、相手のことを気にかけながら夜の時間を過ごしていた。昼間に会うことはほとんどなかった。

それは私が仕事を持っていたからということだけが理由ではなかった。仕事柄、ということもあり、私には昼間少しの時間を作って彼と話をするということはできなかった。彼もまた、土曜日も日曜日もない生活を送っており、私同様昼間にデートを楽しむという時間はなかった。

私たちの出会いは海上保安官として働く彼の職場で開かれた催しだった。彼の職場では所帯を持つことを推奨しているらしく定期的にこのような催し、平たくいってしまえば婚活パーティーが開かれるらしい。

私は当時このような会が開かれていることも知らなかったし、海上保安官について知っていることは皆無に等しかった。水上スポーツに勤しむ趣味もなく、津波に巻き込まれる可能性のある海岸沿いに住んでいるわけでもない私にはそのような職業との接点すらなかったのだ。

そんな私がこのパーティーに参加できたのは、友人のリサのお誘いがあったからだ。常に多方面にアンテナを張り巡らせている彼女は、表参道に期間限定で開かれるカフェの情報から、海の向こうのジャングルで発見された新種の生物の情報まで網羅している。そして、今回のネタがこのパーティーだった。

リサ曰く、

「行ってみたいけど一人で乗り込むのも面白くないし、フットワークが軽くて彼氏もいないスミレなら適任だと思って!」

とのことで、褒められているのか貶されているのかわからないが、せっかく誘ってもらったし、その日に大した予定もなく、彼氏がいないのも事実だ。yes to all をモットーにしている好奇心旺盛な私としては、行かない理由がなかった。我ながら同伴者として適任である。

ただ、このパーティーが私のこれからの人生を大きく動かすきっかけになったことは否めない。もちろんこの時点では知る由もないが。