子どもたちのピンチ・その二

そのように学校生活を楽しく過ごしていたある日、たまたま私の仕事が休みで自宅にいたときのことです。学校の授業が終わり、子どもたちがスクールバスで帰ってくる時刻になったので、部屋の窓から見ていたところ、われわれの部屋からは二十メートルくらい離れたマンションの敷地に面した通りにバスが止まり、兄弟がそろって降りてくるのが見えました。

私は二人に手を振って部屋の中に戻りました。少し経ってからドアのチャイムが鳴ったのでドアを開けると兄が一人だけ立っていました。私が「弟はどうした?」と聞いたところ「マンションの入り口で知らない人と話をしてる」と言うではありませんか!

私が大急ぎで階段を駆け下りていくと、バタバタと足音が聞こえました。そしてマンションの入り口にある警備員室を通り過ぎて走り去る男の姿が見えました。

下の子は入り口を入ったところでキョトンとした顔で立っていたので、「今の人は知っている人なの?」と聞いたところ「ううん、初めて会った人」と言うので、警備員に「今出て行った人は知っている人か?」と聞いたところ、「まったく知らない、初めて会った人です。子どもさんと親しそうに話をしていたのでお友達のお父さんか何かと思いました」とのことでした。

私が下の子にどんなことを話していたのか聞いたところ、「君たちは日本人か? 家族は? お父さんはどんな仕事をしているのか?」などを聞いてきたそうです。そんなこともあり、私から兄弟に、「われわれか、知り合いの大人がいない場合、見知らぬ人とはたとえ相手が親しげに近づいてきても、話はせずにそこから離れるように」と教えました。

※本記事は、2021年10月刊行の書籍『アテンション・プリーズ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。