【前回の記事を読む】「今起こるどんな失敗も挫折も、一年後にはただの笑い話」変えたい自分と向き合うのに必要なことは…

つくり笑顔で相手を笑顔にする そんなゲームを楽しもう いつも笑顔でいれたなら人生楽笑

専門学生のとき焼肉屋でアルバイトを始めたが、当時の僕はまだ根暗でコミュ障で、知らない人と話すのが苦手だった。いやむしろ話したくなかった。

「どうか誰も話しかけないで!」

接客ではなく裏でずっと皿洗いをしていたかった。がしかし、人手の足りないポジションがそこだったのか、顔が良かったからなのか(笑)、僕は表(=ホール)のポジションにつくことになってしまった。嫌だったけど、コミュ障だから言葉に出せず逆らえなかった。

ホール業務というのはお客様を出迎え席に案内するところから始まり、オーダーを聞いて、それをキッチンに伝え、商品提供をし、空いた皿を下げ、最後はお会計してお見送り。バリバリに人と接する、飲食店において重要なポジションだ。知らない人と話をすることを極力避けてきた僕のような人間に任せるのは極めて危険なポジションであることは言うまでもない。

そんな僕の何を見抜いたのか、ただのお世辞なのか、当時の店長は僕にこう言った。

「侑紀くん、すごく笑顔が素敵だね。せっかくだからその笑顔をもっとゲスト(=お客様)に見せてあげようよ。ゲストさん、きっと喜ぶよ」

いやいや何をおっしゃる。そんな訳がないと思いつつ、僕は言った。

「そうですか。でも僕は笑顔に自信がないです。接客の時に笑顔になっているかどうかなんて全く自信がないですよ…」

すると店長は続けて言った。

「そうだね、だったら笑顔のトレーニングをしよう。最初はつくり笑顔でもいいから、自分が笑顔になっているかどうかをいつもチェックしようね」

「チェックするって、常にトイレの鏡を見にいけばいいですか?」

ひねくれた僕は答えた。

「いや、その必要はなくて、ゲストの顔を見たらいいよ。ゲストや一緒に働くキャスト(=スタッフ)の顔は侑紀くんの顔をそのまま映す鏡のようなものだから」

最初は意味が分からなかった。でもそう言われるがまま僕はゲストに向けてつくり笑顔をすることにした。真の笑顔じゃない、無理矢理口角をあげてニコッとするつくり笑顔だ。

びっくりした。僕が笑顔をつくるとゲストも漏れなく笑顔を返してくれる。反対に忙しくてイライラしている時なんかはキャストはもちろん、ゲストの表情に笑顔はなかった。

「これは面白い!」

僕はこれがまるでゲーム感覚であるように面白くなった。自分次第で相手の表情をコントロールできるという、新しいゲームを手に入れた子ども同然だった。僕の中で接客とゲームがイコールで繋がった衝撃的な出来事であり、接客のアルバイトが楽しく感じるようになったきっかけがまさにそれだった。

この時の店長の言葉がなければ僕は飲食店を辞めていたと思う。本当に感謝している。そして飲食店歴二〇年が経とうとしている現在もつくり笑顔をしている。

「侑紀くん、目が笑ってないよー! その笑顔つくってるでしょー!」なんて言われることもしょっちゅうあるが、「あ、バレた?」なんて言ってその場が明るくなるなら本望だ。そのときにはもう本当の笑顔になっている。人は笑顔を見るのが大好きだ。誰しも赤ちゃんを見て可愛いと思うのも、あの屈託のない笑顔が好きだからだ。

試しに笑顔の時に悪いことを想像してみてほしい。僕は想像できない。笑顔でいると楽しくなる。楽しい人が集まってくる。楽しいことがあるから笑顔になるのではない、笑顔でいるから楽しいことが起きるのだ。笑顔最強。

笑顔は女性の「最高の化粧」とも言うが、まさに言い得て妙である。相手の顔は自分の顔を映す鏡。人と接するときにまず笑顔をつくったら人生は思いの外、劇的に楽しくなる。つくり笑顔は優秀な武器だ。しかも完全無料、いつでも、この瞬間から使うことができる。ゲームで遊ぶようにやってみてはどうだろう。

★トライアル:今日人に会ったら無理矢理にでも満面の「つくり笑顔」をしてみよう!

※本記事は、2022年3月刊行の書籍『WORK PLAYER』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。