第3章 情報認知

3 人間の視界を再現する〈ライブ表現〉

臨場感を感じる普段見ている視界

視聴目的の映像は定点カメラのようにカメラを動かさず、編集なしで見せることはほとんどありません。カットを切り替えたり、カメラを動かしたりして見せるのが一般的です。これはリズムを生み出すとともに、人間の視界に近づけて臨場感を感じさせる目的があります。

人間の目にズーム機能はありません。しかしボーッと見ているときの視野と集中して見たときの視野を比べると、後者は明らかにズームされたように大きく感じられます。

また右から左へ視点を変えるとき、視点の移動中の視野は記憶に残りません。人は意識上ではカメラ1台の「1カメショー」ではなく、カットしながら目の前の空間を見ているのです。つまり、視野のサイズ変化があり、適度なカット編集をした映像のほうが、人間が普段見ている視界に近く、その場にいるような臨場感を視聴者に感じさせやすくなります。

被写体に近づいて撮影する

その場にいるような感覚を視聴者にもたらすには、撮影時の被写体との距離とレンズの焦点距離が重要です。焦点距離とは「レンズの中心点から撮像素子に像を結ぶまでの距離」を表す言葉で、焦点距離によって映る範囲が変わります。

たとえば、50mmレンズ(35mm換算)を使い、人間のフルショットを撮影した場合、およそ2.5mほど離れます。焦点距離300mmの望遠レンズを使い、同じフルショットを撮影した場合は15m程度離れることになります。

同じフルショットでも50mmレンズを使い、近づいて撮影したほうが人間の視界に近くなるため、その場にいるような感覚を与えることができます。つまり臨場感を出したい場合は被写体に近づくことが撮影の基本となります。

そのため、映画では特別な場合を除き、望遠レンズはあまり使用されず、多くは24mmから100mm程度の焦点距離で撮影されます。

[写真1]両目を見開いたときの視界に近い

[写真2]日常的な視界に近い
[写真3]凝視したときの視界に近い
※本記事は、2020年5月刊行の書籍『伝わる映像 感情を揺さぶる映像表現のしくみ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。