第3章 情報認知

2〈ライブ表現〉の効果

臨場感による錯覚を利用する

実写映像の最大の特徴は見たままの景色をそのままリアルに記録ができることです。ライブ表現とは、臨場感によって視聴者の感情移入を促し、映像世界の出来事を目の前で見ているように錯覚させるテクニックです。優れたライブ表現は過去の出来事をタイムマシーンのように再現し、フィクションの世界を現実世界のように感じさせることができるのです。

見ている人を映像世界に引き込むためには視聴者の意識を映像内の人物や出来事に集中させる必要があるため、視聴者の意識を紛らわすような特殊効果や過剰演出はあまり使用せず、カットの積み重ねで見せていくシンプルな手法が基本となります。ライブ表現は映画の技術が基本となっており、映像を学ぶものであれば最初に習う映像表現の基礎技術です。

ライブ表現のポイント

・視聴者がその場にいるような臨場感
・時間の途切れ、省略を感じさせない連続性
・作り込みを感じさせない無作為感

ライブ表現は視聴ではなく体験

ライブ表現は映像を視聴させるのではなく、他者の体験した時間と空間を追体験させることです。たとえば野球やサッカーなどのスポーツ中継は基本的に試合時間がすべて映像化されます。なぜなら視聴者はスポーツ観戦という体験を求めて映像を視聴するからです。

そのため作り手は視聴者に現場体験を感じてもらえるよう、映像表現を考えていかなければなりません。ライブ表現を重視した映像は、テレビ番組や映画のように長尺になりがちです。短い動画に慣れた現代では、2時間の映画を観ることに苦手意識をもっている人も多いようです。

しかし優れた映画は他人の人生を疑似体験させてくれます。「たった2時間で別人の人生を体験できる」と考えれば映画はとても時間効率がよいとは思いませんか?

作為感を感じさせない

ライブ表現において最も重要で、最も難しいのが作為感を感じさせないことです。作為感とは誰かが手を加えて意図的に作り出した感覚のことをいいます。当然ながら、映像はカメラマンが撮影し、編集マンが仕上げています。

しかしそのような事実を視聴者に意識させてはいけません。情報伝達においての主役はあくまで情報、つまり「伝えたいこと」であり、作家の個性的表現など視聴者にとってはどうでもよいのです。

ドキュメントだけでなく、映画のような作られたフィクション世界でも同様に作為感を感じさせてはなりません。「誰かが撮影している」「誰かが編集している」「照明が作り込まれている」「登場人物は演技をしている」。本当は実在していない嘘の世界だということを視聴者は当然ながらわかっています。

しかし作り手はそれが嘘の世界ではなく本当の世界だと視聴者に感じさせる必要があります。作為でありながら無作為を感じさせるのは非常に難しいことです。たとえば、出演者が素人だった場合、「自然な雰囲気で笑って」と指示を出してもぎこちなさが出てしまい、作為感を感じさせてしまうからです。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『伝わる映像 感情を揺さぶる映像表現のしくみ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。