「ココという名前は逆に古代の呼び名です。そして古生物同様に、おそらくは私を驚かせようとしたお茶目な夫の仕業でしょう。私にはできない技です。小動物だからこそ、そのようなことができたのだと思います。それは大地の力です。彼の能力についても詳しくは後ほど説明するとします」

今度は佳津彦が質問する。

「姫様はなぜ自分が卑弥呼だと思ったのでしょうか、邪馬台国はどこにあったのでしょうか。あともう一つ、柩の中に武器が見当たらないのですがそれはなぜなのですか、教えてください。お願いします」

「お答えしましょう。その時代、倭国と呼ばれた国を束ねていた該当者は、女王である私ただ一人というわけです。とはいえ卑弥呼という名は好きではないのですが、諸々の事情を鑑みるに仕方がないでしょう。今だけはそう呼んでもよしとします。

しかしまあ、『魏志倭人伝』なるいかがわしい書物には、私の知らないことばかりが書いてあるようですね。まず初めに、魏国などに使者など送った覚えはありません。それが事実だとすれば誰の仕業かは察しが付きますが。

次に、『親魏倭王』などと勝手な称号を私が受けるはずがありません。また、銅鏡100枚が贈られた件についても同様に関知するところではないのです。特に、鬼道なる呪術を使ったとありますが、私は預言者であり、かようなものが何を指していっているのかは皆目見当がつきません。大半は魏国の都合により書かれた狂言だと考えられます。そのようないい加減なものが正史になっているとは驚きです。

次の質問ですが、柩の中に武器類がないのは、この墓があなたたちに出会うことを想定して造られていたとともに、私が必要としなかったためです。私は女王であり予言者でした。それ故に前線に立つことはありません、作戦計画に徹していたのです。数多くの武器や武具の所持が権威の象徴などという価値観を、私は持ち合わせていません、それはセンスがなく美しくないからです」

「姫様すてきー。やっぱりどうしてもカッコイイわー」

明日美が立ち上がり拍手をしている。