《二》ホモ属の進化(二六〇万年~二〇万年前)

写真を拡大 [図表2]アフリカの猿人・ヒト化石の発掘場所

ここまでは人類といえども、他の動物と同じように、ダーウィンの「進化論」で説明できる生物圏の一員にすぎませんでしたが、ホモ・ハビリスからホモ・エレクトスに進化する頃になると脳の大型化が進み、ホモ属(人類)は狩猟採集の移動生活をしながら他の動物から抜け出した人間圏を形成するようになりました。

ホモ・ハビリスの時代(二五〇~一八〇万年前)一九六四年、タンザニアのオルドヴァイ渓谷(図表2参照)で、ケニアの古人類学者ルイス・リーキー(一九〇三~一九七二年)によってホモ・ハビリスの化石が発見されました。

同じ地層から石器なども発見されたので、ホモ・ハビリス(「器用な人」の意味)と名づけられました。その後の研究を総合しますと、ホモ・ハビリスは身長一三〇センチメートル、脳容積は現生人類の半分程度の七〇〇立方センチメートルでした。現在分かっている限り最も初期のホモ(ヒト)属で、二五〇万~一八〇万年前まで存在していたと考えられています。

その後の研究を総合しますと、ホモ・ハビリスは身長一三〇センチメートル、脳容積は現生人類の半分程度の七〇〇立方センチメートルでした。現在分かっている限り最も初期のホモ(ヒト)属で、二五〇万~一八〇万年前まで存在していたと考えられています。

このリーキーが発見した化石は下顎骨、頭骨および手の骨の一部でしたが、この手の骨は、拇指(親指)が他の指と向かい合わせに曲げられるという能力(拇指対向性と言います)を備えていて、ヒトの指を器用に動かす基本的な特徴となっています。

私たちが棒をつかむときは親指と他の四本の指を使って強く握りしめます。これを握力把握と言います。これに対して、たとえば、箸、楊枝などを使うときは親指と人差し指、またはこれに中指を加え、指先で軽くつまみます。これを「精密把握」と言います。

霊長類や類人猿は把握能力を獲得していましたので、枝などの把握はできますが、拇指対向性がないので細かな指先作業はできません。人類はホモ・ハビリスからそれができるようになったのです。これは大変な進歩(進化)でした。そこで「器用な人」と名づけられたのです(日本人は器用で物作りがうまいと言われましたが、もともと人類すべてが器用なのです)。

※本記事は、2022年2月刊行の書籍『アフリカのホモ・サピエンスが天皇制国家・日本を建国するまでの歴史』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。