2. ローマクラブの「成長の限界」

公害問題は、企業からの排水や煤煙などによってそれぞれの地域で発生した疾病および自然環境への被害でしたが、その後、先進国を中心に世界的に生産・消費の拡大、人口の増加、エネルギー消費の増大、汚染の拡大が続き、地球規模でこれら人口増大、工業生産増大と資源・エネルギー・汚染処理能力とのバランスを考える必要性が高まりました。この課題に取り組んで提言をしたのが、ローマクラブによる「成長の限界」です。

ローマクラブとは1970年にスイス法人として設立された民間組織で、1968年4月にローマで最初の会合を行ったことから名づけられています。1970年に「人類の危機に関するプロジェクト」を立ち上げ、マサチューセッツ工科大学のシステムダイナミックス・研究グループに研究依頼を行いました。1971年にその結果が報告され、ローマクラブが「成長の限界」と題して発表しました。

その課題は、現在続いている人口と工業生産の指数関数的成長(年に何%という成長の仕方)について、地球における食糧資源、天然資源、地球の汚染処理能力の制約のなかで、このまま続けることができるかということでした。

① 第一に指数関数的増加は比例的増加とは異なり、[図表1]に示すように、今の変化は小さくても、将来急激に増加する特性を持っている。

② 食糧資源や天然資源、汚染処理については、地球の有限性があり、食糧生産、天然資源の獲得、汚染の拡大の指数関数的増加は不可能である。

[図表1]指数関数(幾何級数)的成長の特徴

③ 人口、資本(工業生産)と食糧資源、天然資源、汚染の間における相互関係について、正のフィードバックの関係にあるもの(成長を促進するループ)や、負のフィードバックの関係にあるもの(抑制したり、減少させたりするもの)などの関係性を分析したモデルを立て、全体として「世界モデル」(筆者の略図を[図表2]に示します)を構築した。

[図表2]人口および工業生産と食糧資源、天然資源、汚染の間における相互関係

④ この「世界モデル」において、1900年~1970年までのデータを基に、現在の人口と工業資本をそのまま幾何級数的に成長させることができるかを1900年~2100年においてシミュレーションしたところ、資源の枯渇や食糧不足、汚染の拡大で限界が生じることを示した。

⑤ 科学技術の発展によって、このような「限界」を取り除くことができるかどうかを検討するため、技術によって資源を再循環させ、エネルギーを無限に獲得し、農業生産性を上げ、汚染をできる限り抑制しても、やはり人口と資本の指数関数的増加を続けることには限界があることをシミュレーションで示した。

⑥ したがって、人口と工業資本の増加について計画的にコントロールし、工業生産と資本の減耗、出生率と死亡率のバランスを取り、「均衡状態」を作り出すことが必要である。

と主張しました。

「成長の限界」の提言の意義は、そのモデルの正確性や予測の妥当性そのものではなく、こうした問題を考える全体的視点や、人口、工業生産、食糧、資源、汚染処理などの問題が相互に関連しているという構造性を提起したところにあると思います。しかし、その「均衡状態」をどのように実現するかという方法については踏み込んでおりません。

※本記事は、2019年4月刊行の書籍『人と技術の社会責任』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。