簡単には言えますが、段差一つとってみても、これを無くすためには大きな知恵と工夫が必要な事は言うまでもありません。しかし誰にとって何がバリアなのか、私たちはなかなか気づく事ができません。そこで彼女に聞いてみました。

「バリアを感じている人、暮らしづらさを感じている人って、どんな人だと思う?」

「段差で苦労する車いすの人?」と彼女は言いました。

「だけじゃないのよね。聞こえない人、聞こえづらい人、日本語がわからない外国人もね」

と言いながら、文字や音の情報だけでは理解しづらい人たちが一定数いる事を前提に、常日頃からピクトグラム(絵文字)を使用しているのも一つのUDだと伝えました。

そして、「聞こえない人に文字や絵による情報も提供せずに、『優しくしましょう』なんて、どんだけ意地悪なんだよって思わない?」と笑いを取ろうとしましたが、彼女は半ベソ状態です。

「私、言われるまでその認識がなかったん。自分も外国に行ったら聞こえてたってわからん事だらけやのに。もし困ってたらすぐに言うてほしいのに」

私は意外な反応にビックリし、きっと彼女のように悪気なく意地悪になってる人は多いのだろうと気づきました。そんな私もその一人で、わからない事だらけです。また、困っていても言い出せない人がいるのも事実です。

「みんなが他人の痛みに鈍感すぎるよね」と私は独り言を言い、

「気の利かない事をしても、気づいた時に何度でもゴメンねと言えばいいよ」と自分への言いわけも兼ねて彼女を慰めました。

※本記事は、2022年3月刊行の書籍『コレぜ~んぶUDなんです‼』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。