深刻になる性差

十歳を過ぎて、僕は僅かに陰毛の生えた股間を眺めていた。自分に納得のいく解釈を見つけようとしても、一向にちんちんは生えてこない。

あの頃の僕は自分の陰核がちんちんになると思っていた。そして股間を眺めるたびに、思いっきり陰核を引っ張るようになった。痛みはそんなに感じない。他の男の子はもっと大きいのに自分のはあまりにも短すぎる。正直、焦っていた。そして、僕は体に障害があるから他の男子と違うのではないかと考えるようにもなった。

やがて、男女分かれての性教育が行われた。僕は男女別の女子の中にいた。劣等感のような恥ずかしさで僕は後ろの方で俯いていた。

男の子と女の子の裸の絵を使って性の成長は説明された。どうみても僕の体は女の子の絵の体に近い成長をたどっていた。聞けば聞くほどに胸の中の闇を知るような気持ちになった。そういえば小学校二年生くらいの時に友達に言われた言葉を思い出した。

「女の子にちんちんは生えないよ」

僕は女ってことなのだろうか。もしそうなら、この先も僕にはちんちんが生えないということなのだろう。いや、本当は薄々、気付いていたことだ。だって、一向にちんちんが生える兆しなんてなかったのだから。それなら納得もできる。

ただ、僕には禁断の壁がある。このまま曖昧に生きて、いつかちんちんが生えると信じていた方がずっと楽だった。というより、そうしなければいけなかった。もしも、そんな現実を目の当たりにしたなら、僕の意思は消えてしまうのだ。

僕は初めて人の成長の限界を知った。女が男になることは絶対的にないのだ。生理の話の時にはほとんどの内容が頭に入らなかった。何となく分かったのは今後、僕にも生理というものが来るということだけだ。もしもそれが来てしまったら、僕は女子ということが証明されてしまう。僕が恐れたのは周囲の目だった。