【前回の記事を読む】「勉強なんかせんでええ」と言う父が成績優秀な娘を生んだワケ

第一章 大自然の中で

困るくらいのお調子者で、大酒飲みの父を持ち、勉強好きの私は、大のおばあちゃんっ子に育った。おばあちゃんは、働き者で、料理上手で、雄弁家で、孫への愛情に溢れ、私にたくさんの大切なことを教えてくれた。

おばあちゃんと言えば、まず浮かんでくるのが、働き者ということだ。料理、洗濯、掃除といった家のことも、庭や畑の草引きやみかん山の草刈りも、米作りや野菜作りも、花つけ、剪定、収穫、選別、出荷という一連のみかんの仕事も、なんでもせかせかとこなし、一日中、三百六十五日、動きっ放しだった。

おじいちゃんは私が物心つく前に亡くなったし、お父さんは私にとって「朝から晩まで酒を飲む」人だったし、お母さんは小さい子供を三人抱えて子育てに奔走していたので、おばあちゃんがこの家の大黒柱のように見えた。

そんなおばあちゃんは、私たち兄弟が学校から帰ると、昔ながらのおやつを手作りしてくれた。私はそれを食べるのを楽しみに、学校から家までの気の遠くなる山道を頑張って歩いたものだ。

さつまいもを平べったく切って蒸して干した「ひがしやま」、同じくさつまいもを細長く切って干して揚げた「かりんとう」、自前でついたお餅を芝の葉っぱで包んだ「芝餅」、同じくそのお餅を薄く切って干して揚げた「かきもち」など、どれもおいしくて、兄弟で奪い合うように食べた。

加えて、おばあちゃんはお喋り上手で、私たちにいろいろな話を聞かせてくれた。夏には、おばあちゃんの部屋に立てた蚊帳の中で寝るのが、ドキドキするイベントだったのだが、その中でおばあちゃんは決まって怖い話をしてくれた。

私は妹の春果と、汗ばむ体をくっつけて、頭からブランケットをかぶり、身を縮めながらその話を聞いた。