ただ、1~2週間かかってでも再び餌付けすることが可能だとわかったのだから、慌てる必要はない。いろいろ試してみることにした。新しくアイデアが浮かんだとしても、金属の付属品を作ってもらうには2週間ほどかかってしまう。テストを始めて2カ月ほど経過した後にいよいよロックモードにする日が来た。

翌日には大きい個体1頭を捕獲することができた。入り口のロックが解除されているので、続けて他の個体が入るかもしれない。もう1日そのままで放置したが変化はなかった。

回収し、その様子を動画で撮影して動画サイトにアップした。持ち帰って処分し、体重を量ると230gあった。クマネズミとしては大きい方だ。長く餌付けを行ったので、大きくなったのかもしれない。

この例の場合も、親と呼べるほどの大きさの個体がまず捕獲されたのだが、続けて入ることはなかった。連続捕獲具のはずが、連続して入らない結果となった。

後述することになるが、ハツカネズミはこの仕掛けで連続して捕獲具に入り、1つの捕獲具で最高7頭の個体を捕獲している。連続捕獲具の性能を確認した上で、10万円のために捕獲具を大きくし満を持してクマネズミに挑んだのだ。しかし、またしてもクマネズミに敗北した。

同じネズミのはずなのにもう一歩のところでつまずいたことになる。そもそも、捕獲具に対する行動がハツカネズミとは違っていたのだ。もし、パンを新しく交換するたびに、親がまず安全を確認するために必ず入るのなら、そして、親が安全を確認して出てくるまで子たちが我慢をして捕獲具に入ろうとしないのなら、連続捕獲は無理だということになる。

親が安全を確認して出てきた後に、タイミング良くロックモードに切り替えることができるとするとうまくいくかもしれないが、その方法が思いつかない。

たった2回の失敗に過ぎないのだが、クマネズミがルールを厳格に守ろうとする集団だと思ってしまっている以上、同じことが繰り返される可能性の方が高いだろうとあきらめるしかなかった。その時には、私は捕獲具作りから撤退することを考え出すほどに打ちひしがれてしまった。それほど、期待をして、長期に亘って慎重に入念に取り組んだ後の失敗だったからである。

ハツカネズミの捕獲結果を整理してまとめる作業に夢中になり始めたこともあって、しばらくの間クマネズミの連続捕獲具作りを封印することにした。

※本記事は、2021年11月刊行の書籍『文庫改訂版 捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。