初回のライブ配信では開口一番、

「UDって何なん?」とアリコさんが聞きました。私は一言、

「バリアフリーみたいなもんよ、以上!」

と即答しました。彼女に限らず、バリアフリーはなんとなくわかるけれど、UDはわからないと思っている人は多いので、初めはUDもバリアフリーも似たようなものだと思ってもらえばそれで充分だと思いました。しかしこれではライブ配信が一瞬で終わってしまうと思ったのか、彼女は次なる質問を繰り出してきました。

「何で『UDアドバイザー養成講座』を受講しようと思ったん?」

このUDアドバイザー養成講座というのは、2000年頃から三重県庁が始めた福祉系の無料講座です。規定回数を受講すれば県知事認定の資格を取得できます。しかしこの資格は行政が認定する他の多くの資格同様、取っても足の裏の米粒にもなりません(取っても喰えない)。それでも私がUDアドバイザーという資格を取りに出かけたのには、少々事情がありました。

私は帰国子女で同年代よりは、ちょっとだけ英語が話せました。とは言え海外にいたのは遥か昔で、今は度胸しか残っていません。そんな私ですが、誰かの役には立つだろうと、結婚して移り住んだ三重県で出会った人たちと、国際交流のボランティア活動を始めました。しかしその活動は、次第に外国人と友達になりたい日本人のための活動に感じるようになり退会しました。

その後、社会福祉協議会が募集した障害者ボランティアに参加した折に、私が帰国子女であると知った職員さんが、市内の障害者団体に私を紹介してくれました。

当時彼らは米国旅行を計画していたため、英会話の先生を探していました。就学猶予で学校へ行っていない人、長い期間ラジオの英会話講座を聞いている人などレベルはまちまち。「覚えておいてくださいね」と言えば点字でメモをとる人、「リピートアフターミー」と言えば話す機器に文字を打ち込む人など、車いすの知り合いはそれまでもいましたが、視覚障害者や手術の後遺症で声を出せない人と接したのはその時が初めてで、初日はかなり驚いた事を覚えています。今思えばよく引き受けたと思います。

※本記事は、2022年3月刊行の書籍『コレぜ~んぶUDなんです‼』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。