「稽古を始めるから、少年部、整列」

先生の号令が飛び、佐久間結衣、津路仁、柳下清、高田舞、野中恵子、城田優が先生の後ろに整列している。

「目を閉じて、はい、開けて下さい。神前に対し礼、先生に対して礼、お互いに礼」

先頭に並んだ結衣が声をかけた。子供たちは道着を着て、白帯に道場の名前と個人の名前が入れられている。帯の結び目も先生から注意を受けながら結んでいるようだった。

「体操、始め、最初に手足をぶらぶらさせて、一・二・三・四、五・六・七・八、二・二・三・四、五・六・七・八」先生と子供たちの声が飛ぶ。

「はい、稽古始めます。最初に右半身構え、直れ、左半身構え、直れ、右半身構え、直れ、左半身構え、直れ、次、臂力の養成一、一・二」

先生のかけ声で子供たちが一生懸命に先生の気合に答えている。少年部では基本を中心とした受け身や基礎運動等の稽古が行われており子供たちの体力の養成に努めているようだ。子供たちはお互いに技をかけ合い、受け身の練習を行っていた。お互いに手を前に出し、手首を掴む動作や相対に構え合い、手刀を相手に打ち込み受ける練習を行っていた。

「佐久間結衣と津路仁、柳下清と高田舞、城田優と野中恵子でお願いします。始め」

先生が組み合わせを伝えた。結衣と仁がお互いに礼をして気合を入れる。「エイ」結衣の気合で手刀を仁に打ち込んだ。仁は結衣の手刀を見失い、おでこに当ててしまったようだった。

「あ、ジンちゃんごめん、痛かった?」結衣はしゃがみこんだ仁を気づかい手をかして仁を立ち上がらせた。

「痛かった、でも僕がよく見ていなかったからだね、ごめんなさい」

仁は結衣に頭を下げて謝った。

「ごめんね、私も気を付けるね、じゃあもう一度いくよ、エイ」

結衣は仁に受けやすいように手刀を打ち込んでいた。仁も今度はしっかりと結衣の手刀を手首で受けていた。先生も心配そうに見ていたがあえて口を出さずに子供たちに任せているようだった。


主な登場人物

佐久間 結衣 遼太郎と直美の長女で、合気道の稽古を行う歳児。超能力を持っている。

佐久間 遼太郎 結衣の父親。型。慎重型でよく考えて行動するが、時に直情的。会計事務所長男。

佐久間 直美 遼太郎の妻で結衣の母親。会計事務所職員。

佐久間 真理 結衣の曽祖母。遼太郎の祖母。

佐久間 幸太郎 結衣の祖父。遼太郎の父。慶応大学経済学部卒。

佐久間 美里 結衣の祖母。遼太郎の母。

津路 仁 結衣の合気道仲間。生真面目で優しい。真丸幼稚園年中。

柳下 清 結衣の合気道仲間。マイペース。真丸幼稚園年中。

高田 舞 結衣の合気道仲間。几帳面。真丸幼稚園年中。

野中 恵子 結衣の合気道仲間。子供たちのまとめ役。真丸幼稚園年中。

城田 優 結衣の合気道仲間。イケメン。真丸幼稚園年中。

山之内 喜久 結衣の合気道仲間で親友。医者の父(直樹)を持つ。母は奈菜。

野崎 美緒 結衣の合気道仲間。真丸幼稚園の同級生。父親は医師、野崎秀樹。母は看護師、野崎里子。

丸川 咲楽 結衣の合気道仲間。父親は県会議員、丸川弘明。母は朋美。

橋本 宇多 結衣の合気道仲間。父親は内閣総理大臣で民自党総裁、橋本総一郎。母は冴子。

中村 忠道 合気道「養神会」道場館長。結衣たちを指導する先生。

鎌田 満 合気道「養神会」道場の一般部の指導員。

小山 昇 結衣が通う「真丸幼稚園」で働く保育士。部長。

内藤 雅子 「真丸幼稚園」の主任保育士。

夏目 美沙 フリーアナウンサー。

マーク・セリンジャー ハワイ大学環境学名誉教授。結衣の超能力を研究する。

ジム・アトキン ハワイ保護スタッフ。

マギー・ワトソン ハワイ保護スタッフ。

※本記事は、2022年3月刊行の書籍『ゆいとじじの物語 合気道のこころと命をつなぐもの』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。