一・四・二 重力異常

机の上に物を静かに置くと動きません。私たちも地表にじっと立っていることができます。物を落とすと必ず鉛直に落ちます。これは、地球上のあらゆるものが重力の影響を受けているからです。重力とは何でしょうか。

この世を支配している基本法則の一つに、万有引力の法則があります。あらゆる物は引き合うという法則です。したがって、地球上にある物と地球とは引き合っています。また、地球上の物体は、地球の自転による遠心力を受けています。この力は、地表にある物体を外向きに飛ばそうとする方向に働きます。重力とは、この二つの力の合力です(図1-6)。

写真を拡大 [図1-6]

私たちが地球の外に飛び出していかないのは、万有引力の方が遠心力より圧倒的に強いからです。この遠心力は、極地域では小さく、赤道付近で大きいため、重力は極で大きく、赤道ではわずかに小さくなります。地球上にある一㎏の物に働く重力は約九・八N(ニュートン)です。

地球上のある場所で測定される重力値は、その場所の緯度や大気圧、標高や周囲の地形の影響も受け、わずかですが太陽や月からの引力の影響も受けて時間的に変動しています。それらの影響を補正して、地球上の平均海水面での重力値を求めます。平均海水面は、陸上では水路に海水を導いたときの仮想水面になります。その値と地球を回転楕円体と考えて計算で求めた正規重力値との差を重力異常(ブーゲー異常)といいます。

重力異常は、地下に周囲に比べて重い物や軽い物、すなわち、密度の大きい物や小さい物があると、それぞれ高重力異常、低重力異常として検知されます。重力異常の例を図1-7に示します。こうして、重力の分布から地下の密度分布を調べることができます。

写真を拡大 [図1-7]
※本記事は、2022年1月刊行の書籍『見えない地下を診る』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。