紙幣が流通する黎明期(れいめいき)には硬貨(や金属)に交換してくれる保証が絶対的に必要なので、個人が紙幣を発行することは難しく、信用を得やすい政府が使い始めました。実際、世界初の紙幣は中国の宋の時代に発行されましたが、政権が信用を保つことができずに廃れてしまいました。次のモンゴル帝国が成立してから安定的に流通するようになったようです。

紙幣がある程度まで行き渡るとみんながその価値を共通認識として持つので、たとえ硬貨(や金属)に交換されなくなっても、紙幣が単独でその額面に書かれている数字の価値を持つようになります。これが現代の紙幣です。

一〇〇〇円と書かれた紙幣の素材や加工技術、芸術的観点での価値などは、ほとんど誰も気にしていません。なのに、日本国内では額面どおりの価値として流通しています。なぜなら、みんながその価値観を共有しているからです。

当たり前のことですが、海外旅行で外国に行くと、手元にある日本のお金はそのままでは使えません。日本のお金は日本でしか使えないんだなぁ、と実感します。

ちなみに為替も同じように、現代では金属との交換が前提ではなくなっています。

第二次世界大戦後はアメリカが金との交換を保証していました。そのためアメリカの通貨であるUSドルが世界の基軸通貨となり、各国の通貨をUSドルベースで計算して取引していました。

しばらくして、もう金との交換はしない、とアメリカが一方的に宣言しました。アメリカ以外の国々は戸惑いましたが、すでにUSドルを基準とした国際的な取引が出来上っており、他の選択肢が無いことから現代でもUSドルを基軸通貨として特に混乱なく国際経済が回っています。

※本記事は、2022年2月刊行の書籍『 社会人による社会人のための資本主義とは』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。