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中近東の旅

かつて中学校で習った世界四大文明はメソポタミア文明・エジプト文明・インダス文明・中国文明であるが、イラクのチグリス川・ユーフラテス川添いはシュメール人が建設したもっとも古いメソポタミア文明の地である。その一つのイラクのバビロンの空中庭園を訪れることを楽しみにしていた。

また、中近東は中国の漢時代に形成された中国~ローマを結ぶシルクロードの経路であり、そのために東西の文化の十字路であった。それはアレクサンダー大王、玄奘三蔵、ジンギスカン、マルコ・ポーロなどが通った道である。そしてイスラム教を基本としたイスラム文化の地でもあり、私にとっては欧米のような豊かな情報を把握していない未知の世界であり、訪れることが楽しみであった。

トレーラーバスで行くシリア砂漠シリア(ダマスクス)→イラク(バグダッド) 一九七四年二月二日

中近東の政治や社会情勢は複雑だ。中近東やアフリカの国境は、それまでの歴史や民族や部族の分布を無視して第二次世界大戦後に欧米諸国が勝手に直線で国境を設定したのが紛争の要因のひとつである。そして、イスラエルとアラブの間には歴史的な対立があり、ユダヤ人の故郷であるイスラエルに極端に肩入れする米国はアラブ諸国で攻撃の的となっている。

その上米国は世界の警察として、米国の価値観に基づく正義を他の国に強引に押し付ける。この地球におけるさまざまな国は民族、歴史、宗教、言語などが多様であり、それに基づく多様な文化や価値観があり、それが世界を多様で豊かなものにしている。しかし、それを米国のひとつの価値観や基準を押し付けられては反発するのは当然である。

米国は経済力や軍事力は世界の唯一の超大国であるが、それだけで世界の国々や人々から尊敬されるものではない。個人としての人間でもそうであるが、金があるだけの人や腕力がある人が必ずしも尊敬されないのと同じである。誰でもが自ずと尊敬したくなる魅力とは知性や道徳に基づく豊かな人間性であろう。そして、国でも同じである。