【前回の記事を読む】「目に見えない電磁波」を使えば、地下深くまで観察ができる!

第一章 地球の診断

一・三 いろいろな物理探査法

表1─1に、現在よく使われている物理探査法をまとめて示しました。

表の第一列に各探査法で利用する物理現象を示しました。第二列と第三列には、受動的方法と能動的方法に分けて、探査法を挙げました。さらに、第四列には探査の結果として得られる物性を示しました。

[表1−1] 物理探査法の分類

受動的方法とは、利用する物理現象が自然に存在する手法のことです。これらの手法は物理現象やその変動を捉える受信装置だけあればいいので、測定機材は少なくて済みますので、持ち運びが容易なため、費用も少なくて済みます。

しかし、自然現象やその変動が計測可能な強度でいつも起こるとは限りません。また、現象が弱い場合はその場所のノイズに埋もれてしまうことがあるので、いつも計測ができるとも限らず、長い計測時間が必要なこともあります。

次に、能動的探査ですが、人工的に探査に必要な信号(地震波や電磁波のこと)を送信するので、受信装置とともに送信装置が必要です。一般に、送信装置は大掛かりな装置になり、陸上では自動車等が入れる場所に設置することになるため、どこでも実施できるということにはなりません。

しかし、航空機に送受信装置を積めば、どこでも自由に探査できます。このような方法は空中探査といわれ、最近発展してきました。

一方、海上では、船に送受信装置を取り付け曳航すれば、自由に航行して、理想的な送信、受信装置の配列が実現できます。能動的探査では、制御された信号を繰り返して発信できるので、受信されるデータも信頼性の高いものになりますし、時間をおいて繰り返し探査を行い、地下の変化を調べることも可能です。

受動的探査法と能動的探査法は探査の目的により使い分けられることになります。第四列目には、探査の結果、地下での分布として表現される物性を記載しています。物性とは物質の示す物理的性質のことで、力学的・熱的・電気的・磁気的・光学的な性質のことです。

地下の地層にはいろいろな土や岩石が分布していますが、物理探査の結果として表現される分布は、探査の分解能に応じた範囲の平均的な性質になります。

たとえば分解能が一〇mというと、地下で一〇mの範囲の平均的物性がわかるということです。したがって、ボーリングで地下から採取された局所的な数㎝程度の大きさの岩石試料の物性と異なる場合もあります。

探査による地下の分解能は、主に探査手法や計測する測点の間隔で決まります。一般的には測点の間隔を短くすれば分解能は高くなりますが、深部では浅部に比べて分解能は低くなります。