【前回の記事を読む】【小説】殺人事件の容疑者の一人が出頭…自供されるコトの経緯

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省吾は若宮の部屋に戻り、カップラーメンを差し出した。

「食えよ!」

「何でカップラーメンなんだよ!」

「お前、ラーメン好きだっただろ? これから食べられなくなるかもしれないからさ、気分転換と俺からの差し入れだよ」

「わりーな」

若宮は少し笑いながら、ラーメンをすすった。しかし、そのうち泣き出して、

「情けねえな」

と言った。すると、省吾が言い出した。

「俺さ、もしかしたらだけど、刑事、辞めるかもしれないんだ」

「えーーっ?」

「まあ、食えよ」

若宮は省吾の目をじっと見た後、ラーメンの麺に息をふきかけて、ヅヅヅッとすすった。

「何でまた……」

「おふくろがさ、静岡で、畑やるって言うんだ」

「ん? それと、お前が刑事辞めるのと……どういう関係なんだよ」

「土地が千坪もあるって話だ。おふくろ一人じゃ無理だよ」

「わかんねぇー、他の誰かに頼めばいい話だろ?」

「そこに、お前も来ないか?」

「何だよ? 俺はこれから刑務所入って、罪を償うんだぞ」

「出て来てからでいいんだ」

「マジかよ」

「お前だけじゃない。オレオレ詐欺の受け子やかけ子やパーフェクトの塾生やアルバイトも

みんな誘って来いよ」

「お前、そんなことして自分の人生、俺たちのために犠牲にすることないじゃないか!」

「犠牲じゃない! やりたいんだ!」

「それで、俺たちでも受け入れてくれるのか?」

「実はさ、妹がアルバイト探してるからって俺に頼みこんで来たんだ」

「お前のおふくろさんは前科者でも雇ってくれるのかよ」

「そういう人だよ、俺のおふくろは」

「マジかよ」

「ラーメンが伸びるぞ」

「ラーメンどころじゃねえよ……みんな喜ぶよ」

そして、若宮は泣きながら鼻水の入ったラーメンをすすった。

その後、省吾は若宮から聞き出し、おおよその事件の流れがわかった。