鬱状態の原因は何か

パート6で、サンルームの壁に猫専用の出入口があることを話しただろ。榎本さんちでは1年前にキッチンや洗面所のリフォームと、サンルームの増築工事を行ったんだ。

その工事の中で猫の出入口を作ることになった。引き戸付きだ。俺を外に出したくない時はそこは閉められてしまう。例えば榎本さん夫婦が旅行に出るなどで、何日かお留守番する時などは閉めて行くんだ。

俺がどこか遠くへ行ってしまわないかという心配や、よその猫が入って来る心配をしてのことだと思うよ。で、俺が言いたいのは、その工事のことだ。榎本さんちはその頃、共働きだったので、日中は俺はお留守番だ。

体格のいい大工さんが来て、家の中や庭を大工道具を持って動き回っていると、にゃん太郎は怖がるだろうと榎本さんは心配した。悩んだ末に、俺を二階の部屋に閉じ込めて、仕事に行くことになった。そのことで、俺がそれまでに経験したことがないほどの恐怖に見舞われるとは、誰も想像だにしていなかったと思う。

二階の部屋にいると、ドカーン、ドカーンと、とてつもなく大きな音が聞こえて来たんだ。雷の音くらいに大きい。繰り返し何度もだ。

いったい、これは何の音だ? 何が起こっている?

部屋の外のことが何も分からないから、原因を突きとめることもできない。逃げようにもドアは閉まっている。怖くて、ダンボールの箱に避難して我慢するしかなかった。

「榎本さん。早く帰って来てよー」

と叫びながら、夕方になるのをひたすら待った。榎本さんが仕事から帰って来て、俺を二階の部屋から出してくれた時、榎本さんに向かってニャンニャン鳴き続けた。すると

「どうしてこんなに鳴くのかな」

と抱っこして、体を撫でてくれた。

「にゃん太郎は抱かれるのを嫌がるのに、今日はどうしたのかな」

と言っていた。俺は

「大きな音がして怖いよ」

と必死に訴えているのに、人間である榎本さんには猫語が通じないんだ。分かってもらえない。どうしたらいいのだろう。困ったな。