【前回の記事を読む】多くの人々が楽観視…現状の社会だと「新たなる危機」を招く?

第3節 新たなる危機

市場経済の社会は、各人が自由に儲けて生きていこうと欲につられ働くため、計画経済の社会よりはGDPが高い。けれど、この仕組みは大企業や富裕層には有利で、中小企業や一般市民にとっては不利なことが明白である。

私も以前住んでいた市の誘致した会社に勤めていたこともあるが、他市の大きな会社に吸収合併された後、いろいろな営業や店舗経営などに手を出し、一生懸命働いたつもりであるけれど、最終的にはどれも失敗してしまった経験がある。

そのとき市内を見回して見ると、地元のデパートや中小企業などが大企業の進出のために倒産していたし、東京からきたデパートさえも売上が少ないからと引き上げていた。

後に残された企業・商店の90%以上もが閉店するか苦しんでおり、日赤病院や魚菜市場までも一時的に閉鎖を余儀なくされたのである。

さらに、付近の小さな市や町などはほとんどの店舗のシャッターが降りていて行き交う人影さえ見えず、主要道路には風に吹かれた塵が舞っているばかりであった。

このような市および周辺地域の状態は日本だけでなく、アメリカの市などが報道されたこともあり、それは、資本主義(市場経済)社会全体の末路を縮図にしているようなのであった。

現在の世界に、運の良い約1%の富裕層と運の悪い約50%の貧困層ならびに約10%の超貧困層がいるとされているが、残りの40%の中流層は、運のある人と運のない人に分かれているようである。

そして、富裕層ばかりに<富が偏倚>するに従って、約99%の人たちの生活は次第に低下しており、最下層のほうから「生きていく自由」を失う者も多くなるように思われるのである。

日本の総務省が全国消費実態調査などを基に財務省に作成させた資料によると、年収300万円未満※1の壮年層世帯が1991年の3.6%から2009年には7.1%に増えており、若年層世帯はより悪い状態であると発表されている。

(注1)国や地方自治体で働きながら貧困に苦しむ人の現状を考える「なくそう! 官製ワーキングプア研究会」は、年収200万円未満で長く働いていても昇給はないと公表し、民間に200万円以下の者や失業者が多くいる実状も報道されている。