【前回の記事を読む】自分の息子が東大合格!? 子育てポリシーの「トヨタ式」とは?

第一章 子どもの地頭力を鍛えるためのトヨタ式

子育てにおける決意と覚悟

ユニークな発想を有している人間力の高いビジネスエリートには、偏差値の高い大学出身が多いのは、認めざるを得ない正真正銘の事実である。

著者は、絶対に早慶以上に入学させるという強い決意と覚悟をもった。決して、夢物語ではない。レベルの高い恵まれた環境のなかに、是非子どもを送り込みたいと強く願った。すばらしい教育環境が、地頭力と人間力のポテンシャルを押し上げ、子どもの選択肢を増やしてくれる。学歴が努力の証明書であることは断言できる。

優れた環境下で育まれれば、努力をし続ける能力を有した意識レベルの高いハイスペックな人たちとの人脈も築かれる。子どもの人格形成や固有の才能を、輝かしい未来に向けて、大きく開花させられる。

なかでも、東京大学は日本一の潤沢な教育資金を確保しており、人材育成においては、ピカイチの頭脳集団と教育インフラを有している。東大生一人あたり、何と年間五百万円以上の国費予算が計上されているのだ。設定した目標に向かって日々精進をし続けることができる希少な能力を、どうやって身につけさせたのか、試行錯誤の子育ての取り組みをお伝えしたい。

著者は、教職者でも科学者でも何でもない。しかも、正真正銘の窓際族だ。教育に関する知識や科学的な知見はまったくないド素人である。

しかし子育てに関しては、ヒエラルキー的な会社組織とは異なり、上司からあれこれ指図をされてストレスを溜めることなく、自分の思いや考え方に従って、思う存分に全集中で舵取りができる。それだけに、親としての真価が問われて、責任をひしひしと感じるが、真のやりがいを実感できる。

上司たちのご子息よりも、世のため・人のために貢献できるダントツに優れた人間を育て上げるのだという強い決意と覚悟をもった。仕事でも子育てでも、その成果は決意と覚悟の大きさで決定する。それは誰にも止められない。

子どもの巣立ち後に振り返ってみて、トヨタ式を信じて活用した具体的な取り組みこそが子どもの地頭力と人間力アップに間違いなく寄与したと思われるエッセンスを、本書で列挙してみた。

〇〇教育法のような難解な理論ではなく、お金をかけない、実はたったこれだけの一歩一歩の地道な成功体験の積み重ねである。

これが、年輪の実力だ。一気にフルスロットルで、アクセル全開の瞬間風速を上げるのではなく、日々のコツコツの誠心誠意の努力に尽きる。打ち出の小槌のようなショートカットは、ないのだ。つまり、「実は、足元にヒントあり!」である。

トヨタの現場では、現地現物主義に基づいて、「もっと良くしたいという、向上心の改善フィロソフィー」が、確実に根づいている。現在が最低レベルであり、これからが進化の始まりという考え方である。この改善マインドが、正にトヨタの真骨頂である。実は、トヨタ式は、AI時代を先取りする先進的な手法ではなく、むしろ原始的なノウハウである。決して、門外不出の代物ではない。

現在トヨタには、卓越した技術や技能を体得した強靭なカイゼンのプロ集団が存在し、モノづくりの圧倒的な基盤がある。さらに、トヨタ式の修練により、筋肉質の引き締まったボディを獲得できており、リーマンショックやコロナショックなどの逆境や経営クライシスに対しても、すこぶる強いのだ。

例えば、中部国際空港(セントレア)・トヨタ生協・トヨタ記念病院・日本郵政や東京電力などの企業においても、トヨタ式をフル活用しながら、業務改革に取り組み、スパイラルアップした輝かしい成果を出している。

またコロナ禍に、地元の医療用ガウン製造会社において、トヨタ式のカイゼン指導により、五百枚/日から五万枚/日へと、生産性百倍アップを達成したケースもある。このような幾多の実績を勘案すると、トヨタ式の極意を、子育てに活かさない手はない。