それと、ついでに「もう1つのもの」は付けて欲しい。

日本は高齢化の進行が速く、高齢者が増え続け、それに伴い認知症を患う人も多くなっているという。認知症の人は徘徊してしばしば行方不明になる。そこでGPS機能を使って探し出すことが始まったそうだ。これを使うには、探される人がこの機能の端末を身に付けていなくてはならない。

人間はキーホルダーにして首からぶら下げたり、シールを靴や鞄に貼り付けて使用しているそうだ。飼い猫もよく行方不明になる。俺も犬に睨まれて、2日以上も物置下から出て来れず、行方不明になった苦い経験があるだろ。

そんな時GPS機能を使った機器があったら、居場所を見つけてもらえた筈だ。猫の首輪に付ける「もう1つのもの」とはこのことだ。猫の行動範囲は意外と狭いんだよ。俺の経験と勘から言わせてもらうと、半径100メートルくらいで、飼い猫ならけっこう家の近くにいるんだよ。

俺だってそうだったしな。20メートルくらいしか離れていない近場にいるのに、見つけてもらえないのは悲劇でしかないよ。猫に機器を付けるとしたら、首輪しかないよな。首輪に付ける猫用GPS装置の開発を誰か進めてくれないかな。

待てよ。猫より遥かに高い知能を持つ人間のこと。昔はなかったけれど、今はもうあるかもしれない。榎本さんの奥さんも同様のことを考えていたようで、ニャニャゾン通販を調べていた。

やはりありました! 俺の考えることなんてとっくに人間は考えているということか。

「スマホで猫の位置を探せる電子タグ……」

といった文言で紹介されて、数多くの機種が既に市場に出回っている。奥さんが選んだのは重さ11グラムほどの軽いメダル型の電子タグだ。それなら輪ゴムの首輪にも付けられる。しかも半径100メートル以内なら通信できるので、猫の行動範囲にピッタシ一致する。奥さんは早速それを購入して、俺の輪ゴムの首輪に付けた。

輪ゴムの首輪にGPS機能付き電子タグ。これが俺のニューファッションだ。付記「猫の行動範囲の大規模調査結果」が2020年に学術誌『AnimalConservation』にて発表された。それによると通常の行動半径は100メートルである。この調査は6か国で925匹の猫にGPS装置を装着して1週間行動範囲を追跡したというものである。

にゃん太郎の経験は確かで、勘は極めて鋭いと言わざるを得ない。

※本記事は、2021年11月刊行の書籍『おもしろうてやがて悲しき』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。