「そうかい。それなら僕がそっちに行くから……」

坂東は瑠衣の座っているソファーの後ろに来て、耳元に顔を寄せ唇を近づけささめいた。坂東の口から吐く息は、赤ワインとカマンベールチーズが混ざり、まるで腐った魚のような臭いがして、思わず瑠衣は“ゲロ”を吐きそうになった。いつの間にか、テーブルの上にあった赤ワインのボトルは空だった。

「小学生のときから君を見ているが、今の君は一段と輝いているよ。誰も君に寄りつかないなんて、僕には信じられない。俺なら、ほっとかないけどな」

と言いながら、坂東は瑠衣の服の隙間から胸元に手を入れてきた。瑠衣はびっくりして、手を払おうとしたが思いのほか重かった。抗う瑠衣を坂東は強引にソファーの上に押し倒し、キスを迫ってきた。瑠衣は、何度も頭を横に振り、させまいと抵抗したが、ついに力尽き唇を奪われてしまった。

馬乗りになった坂東は、瑠衣の服を引きちぎるように脱がし、ブラウスの上からブラジャー越しに乳房をもみはじめた。瑠衣はもてる力で必死に歯向かったが、男の力にはかなわなかった。

「奇麗だよ。かわいいよ。瑠衣ちゃん好きだよ」

と坂東は何回も叫びながら手をスカートの中まで入れてきた。逆らう瑠衣に坂東は、パンパンと両手で強く頬を数発叩いた。瑠衣は、脳震とうのようになり気を失った。しばらくたって、朦朧とし気づいたとき、瑠衣は“すっ裸”にされていた。何事が起きたのか瑠衣にはわからなかった。

「おいしかったよ……」

その言葉を聞いたとき瑠衣は、自分が「レイプ」されたと初めて気づいた。脱がされた服を素早く束ね、一目散にトイレに駆け込み急いで着た。突然、吐き気をもよおしてきた瑠衣は、便器の縁に両手をついた。初めて口にした赤ワインと少しばかりのチーズケーキの残骸に、こげ茶色のコーヒーが混ざった嘔吐物を繰り返し吐き出した。便器の中は、赤茶けた色に染まった。

「レイプされたんだ」と心の中でつぶやいた。

※本記事は、2021年11月刊行の書籍『一闡提の輩』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。