第2章 あなたの心は健康ですか?

① 現代人の「心の健康」

心の健康については無頓着

かつて、私がビジネスパーソンだった頃、「あなたの心は健康ですか?」と問われたら、どのように答えただろうと、今、この原稿を書きながら考えています。心が不健康な状態をあえて定義するならば、図らずもうつ病など心の病に罹ってしまった人、といった明確な区別があるという程度の理解しか、当時の私は持ち得ていませんでした。

ならば、答えは簡単です。先の問いには、迷わず、「はい!」と答えたと思います。私の立てた心が不健康な状態の定義には、自分は、生涯無縁だと高をくくっていました。

もちろん、それなりの理由もありました。小学校から高校卒業までは皆勤賞。働き始めてからも病欠は一度もなかった私は、健康にだけは、人一倍の自信がありました。ですから、その延長線上で考えると、心の病になるなど想像さえできませんでした。

うつ病などの心の病になると考えられる背景にはストレスなど様々な要因があります。ストレスの原因となりやすい職場の人間関係においては、少なくとも私は、周りの人に恵まれていたおかげで、苦手だと感じることはほとんどありませんでした。

仕事に関しても、残業はガンガンやってよい時代でしたから、夜食のスナック菓子を買い込んできては、定時以降も生き生きと居残っていた気がします。夜遅く帰るわけですから、身体は疲れていましたが、心が疲れるなどとは、考えもしませんでした。格好良く言えば、それがビジネスパーソンらしい姿であったように思います。ところが、そんな心の健康についての浅はかな知識など、見事に裏切られる出来事を経験します。

自分は大丈夫の罠

とある冬の朝、いつも通りの出勤日、玄関に腰掛けてロングブーツを履こうとしたときのことです。ブーツのファスナーが上がりません。あれ? 太った? いや、そんなレベルの問題ではありませんでした。昨日は履けたブーツです。明らかに足がむくんでいました。

ん? どした? 考える余裕もなく、別の靴に履き替えて慌てて家を飛び出しました。職場で、朝の一件をおしゃべりしていると、足がむくむって悪い病気のサインだぞ、と上司や同僚に散々脅され、念のために社内にある健康管理センターを受診しました。

「微熱はいつからですか」と先生に聞かれて、はじめて気づく有様。

「紹介状を書きますから、とりあえず今から、すぐに、この血液検査の結果を持って、総合病院に行って下さい」

「すぐに、って。今から、って。仕事中だし」と、頭の中で、独り言をつぶやいていたら、「今からですよ! 聞いていますか!」と、再度、先生の声がして、私は我に返りました。

※本記事は、2020年3月刊行の書籍『Over Thirty クライシス』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。