「やはり、力ずくで連れ帰るしかねえか」

言うなり、ガマガエルは跳躍(ちょうやく)した。

恭子との距離を、一気に詰める。

ギンッ!

眩い閃光(せんこう)が、辺りを一瞬明るくする。

男のナイフを、恭子のナイフが受け止めたのだ。

普通の女の子だったら、この一撃で傷を負っただろう。いや、例えナイフで防いだとしても、ナイフがはじき飛ばされていたはずだ。

日頃の特訓の成果だった。

そしてその一撃で、恭子は感じ取った。この男が殺意を持って攻撃している事に。

鋼同士の衝撃で生じた閃光が、その一撃の強さを語っていた。

「お前の祖母は、先の大戦でも手こずった日本の最終兵器だ。我が国のモノにならないのなら、殺しても良いとの指令を貰っている。手加減はせぬぞ」

祖母? おばあちゃんの事?

そんな思考時間も許されない程、ガマガエルは次々と(やいば)(はし)らせる。男が放つ様々な角度からの攻撃を、恭子は全て(さば)いた。

「知っているぞ。お前の能力は、肌に直接触れなければ発揮されない事を」

確かに男の肌が露出している箇所は何処にも無かった。身体に触れさせる隙も時間も与えない。

「そらそら、避けてばかりでは、いつか捕まるぞ!」

恭子は相手の攻撃を、目では無く気配で読んでいた。そうで無ければ暗闇の中、暗視ゴーグルを着けたプロの攻撃など躱せる訳は無い。

――私のスキルを利用しようとする大人は嫌い――。

恭子は次第に怒りと興奮に包まれていった。

※本記事は、2021年8月刊行の書籍『スキル』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。