自分の部屋で天井を見ながら(やっぱバイクはダメかぁ~、他に何かないかなぁ~)と考えていると父ちゃんが俺の部屋へと入ってきた。

父ちゃんはまじまじと俺の部屋を見回すと。当時俺が好きだったアニメのポスター(ちょっとロリ萌え系)を見ながらため息まじりに、

「お前の部屋にずいぶんと入ってないが、相変わらずだな。今母さんと話し合った。自動車学校のお金はお前の貯金から出せ。あとバイク教習にはヘルメットや手袋なんかも必要だが、手袋は父ちゃんの貸してやる。ヘルメットは明日バイクショップに買いに行こう」

父ちゃんはぶっきらぼうに言うと、部屋から出ていこうとした。

俺は慌てて

「えっ、免許取っていいの?」

「まぁ頑張ってみな」

父ちゃんはそれだけ言うと部屋から出て行った。俺はしばらく1人になった部屋で父ちゃんの言葉を頭の中で繰り返していた。どうやら父ちゃんは俺が免許を取る事に賛成らしい。わざわざあの怒りマックスの母ちゃんを敵にしてまで俺の味方になってくれるなんて、どういう風の吹き回しだろう?

この頃、俺と父ちゃんは決して仲の良い親子ではなかった。誤解のないように書くけど、別に仲が悪かったわけではない。互いに無関心っていうか、必要以上に会話、接触しないっていうか、多分好むものや関心があるものが違っていたんだと思う。

6 兄弟や親子にだって相性ってありますもんね。

① 俺が中学生のときの事なんだけど、リビングで優人から借りてきた漫画(これもちょっとロリ萌え系プラスちょっとエロ)を読んでいると父ちゃんが真顔で「もし俺とお前が同級生なら、3年間一度も会話なかったろうな」と、ため息まじりで言った事がある。

5 父ちゃん言うねえ。

① でも実際そうだったと思う。俺の父親はアウトドア派で多趣味。友人も多くて家にもよく連れてきていた。何事に対してもアグレッシブな人で消極的でいつもウジウジしている俺を見てイライラする事も多かったと思う。

6 そういえばユイナさんとはどうなったんですか?

① 6> 相変わらずって感じでしたね。一緒に下校するぐらいしか接点なかったし、中間テストや家庭訪問とかあってあまり会っていなかった。

※本記事は、2021年10月刊行の書籍『タンデム』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。