原爆の二つのタイプ

マンハッタン計画では、原子爆弾として二つのタイプが可能であるとして、研究開発を継続しました。

いわゆる広島型原子爆弾の起爆方法は、図1のように砲身型(ガンバレルタイプ)と称し、タンパーと呼ばれる鋼鉄製のパイプの一端にウラン二三五の塊を置き、もう一方の端に置いたウラン二三五の塊を火薬の力で吹き飛ばし、互いにぶつけて一塊として臨界量を超過させることで起爆させるというものでした。

[図1]砲身型(ガンバレルタイプ)

しかし、このウラン二三五の生産は当時の技術では非常に困難であることが明らかになりました(当時の遠心分離機は性能が悪かったのです)。それに対し、プルトニウムは専用に作られた原子炉の副産物として得られるために生産は比較的容易でした。

もう一つのタイプのプルトニウム爆弾は、図2のように、空洞を持つ球状のプルトニウム二三九塊の周囲に配置された球状の爆薬から発生した球状の圧縮波がプルトニウム塊を押しつぶし、内部の圧力を一気に上昇させて臨界量を超過させることで起爆させるものでしたが、この爆縮型原爆(長崎型原子爆弾になりましたが)の起爆方法には、圧縮力に少しでも誤差があると、大事なプルトニウムが爆弾の外に放り出されてしまい、大規模な爆発を起こさず不発に終わってしまう恐れがありました。

[図2]爆縮型

この圧縮波を一点に集中させる「爆縮レンズ」を作り出すのは困難を伴いましたが、数学者のジョン・フォン・ノイマン(戦後、現在のノイマン型コンピュータの開発者としても有名になりました)は一〇ヶ月にわたる数値解析によって、この問題を解決しました(図2の周囲三二ヶ所に同じ起爆装置を置き、誤差は百万分の二秒を実現しました)。

しかし、圧縮方式については、当時の技術で完璧な「爆縮レンズ」を作り出すのは不安が伴いましたので、この爆弾を実戦で十分な信頼性を持って使用するために、事前に起爆実験を行うことにしました。