物理探査による地下の診断では、まず、探査対象地域の既存資料の調査を行い、次に現地での計測、取得データの記録を行います。さらに、データの分析・解析を行い、地震波速度や電気抵抗などの分布を可視画像としてイメージ化します。このような地下のイメージ化の例を図1に示します。

写真を拡大 図1 反射法音波探査により得られた海底面下の地層の分布(地震調査研究推進本部HPより引用)
ほぼ水平な赤や黒の太い線は音波が反射する所で、速度が異なる地層の境界面を示しています。ボーリングによりその境界面位置が確認されています。図の中央部に活断層があり、その位置で地層境界が不連続になっています。ボーリング地点の間にある断層の位置が反射法探査により正確に捉えられています。42m深での水平断面によると断層は右横ずれであることが確認されています。
 

この図は、地下の地層境界の変化を音波が反射する面として画像化したものです。ボーリング位置の間にある地層の起伏や不連続が、物理探査の結果からわかります。さらに、得られたイメージを探査の目的に応じて必要な物性(地下岩盤の強度や透水性など)に解釈します。ここでは既存の地質資料やボーリングデータも使用され、探査結果の妥当性が確かめられます。

このように、物理探査は、地下の広い範囲を立体的に調べられることが特徴です。地下に細い孔を開けて調べるボーリング調査により、地下の土や岩石を直接採取して調べることが最も確実なように思われます。

しかし、ボーリングは、掘削地点だけの調査であり、周辺の状況はわかりません。そのため、調査する場所の地下を確実に知るには、数多くのボーリング調査が必要となり、多くの費用と時間を要します。図1で示したように、物理探査とボーリング調査を併用することにより地下の様子をもれなく調べることができます。

物理探査は、近年の電子機器による計測技術の高性能化やコンピューターの小型化、大容量化・高速化といった技術の進歩により支えられ発展してきました。いまや現場での計測は自動化が進んでいます。計測を短時間で行うことができるようになった上に、簡単なデータ解析を現場でできるようになり、計測ミスの防止やノイズの除去もできるようになりました。

また、コンピューター技術の進歩は、大量のデータを短時間で処理し、地下のイメージを作成することを可能にしました。これまでは計測方法や計算能力の限界により、深さ方向だけ変化がある水平な層構造(一次元構造)と仮定して解析する方法や、ある方向だけは地質構造が一様に続く構造(二次元構造)と仮定する方法により地下をイメージしていたので、正確さを欠くこともありました。

ところが最近では、地質のどの方向への変化も知ることができる地下の三次元構造を解析することも可能になっています。三次元の世界に住む私たちとしては、究極の技術レベルに近づいていると言えるでしょう。これからの物理探査は、三次元のイメージに基づいた地球診断技術としての発展が期待されています。

※本記事は、2022年1月刊行の書籍『見えない地下を診る』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。