その後も雑談が続いた。そして、若宮の会社のメンバーについて話した。それによると、若宮の会社は知り合い同士で声を掛け合ったり、近くの喫茶店に貼り紙をして募集をかけて集まったメンバー。若宮が不動産屋に勧められた貸店舗がこの場所だそうだ。

「そうか。パーフェクトは犯罪目的で勝手に会社や塾として使ってたけど、お前の会社はビジネス目的で、部屋の家賃もちゃんと払ってるんだよな」

「そうだよ。ちゃんとした会社だよ」

「酒、お代わりしないのか? 今夜は俺のおごりだ! まあ、遠慮しないでジャンジャン飲んでくれよ」

「わりーな」

「私もおごってよね」

「女の子は控えめにな」

「はいはい」

省吾はハイボールのお代わりを頼み、若宮に飲ませた。

「若宮、飲み比べでもするか?」

「俺の方が強いよ。絶対俺が勝つぞ!」

「俺だって負けないぞ!」

「じゃあ、私が見ててあげる」

二人して一気に飲み干して、またお代わりをした。

「そろそろ、その辺にしておいた方がいいわよ」

「まだまだ!」

二人して酔っ払った状態で、紀香はエアリーを下から取り出し、こっそり若宮に向けた。

《俺は悪くない。俺は悪くないんだ。悪いのは大木なんだ! 自業自得だよ》

そして、省吾は酔っ払いながらも若宮に質問した。

「お前さ、手袋やパーフェクトの会社の証拠を、わざと俺に見せただろ?」

「何でだ」

《そうだよ。よくわかったな》

「お前もパーフェクトに関与してるな」

「してない」

《俺もボイスレコーダーに声入れられた一人なんだ》

「パーフェクトの塾生やアルバイトはお前の会社にもいるよな」

「一人……だけ……な」

《俺とあと女二人がそうだ》

「で、大木を殺したのは誰だよ」

「……大木は……自殺、だ、ろ」

《手分けして、四人でやった》

「誰だよ」

「……」

《……》

その後、若宮は寝てしまった。省吾はあらかじめ薄いハイボールを頼んでおいたので、紀香からエアリーをもらって覗いてみた。お酒を飲んだ時の記録がある。

「やっぱりそうか」

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『携帯エアリー』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。