また、一万年前の東アジア(中国長江中流域)は、イネ(米)の起源地となりました。この農業(イナ作)は紀元前四〇〇〇年頃から、長江下流域に伝播し、紀元前三五〇〇年以降、台湾に伝わり、図一のように、紀元前二三〇〇年頃にフィリピン、インドネシア諸島に、紀元前二〇〇〇年頃にはジャワとスマトラに、紀元前一六〇〇年頃にはニューギニア域に伝播しました。しかし、これはニューギニアの低地に住む人たちだけで、高地に住むニューギニア人はすでに独自に農業を始めていました。

さらに南に大陸伝いに伝播したイナ作は、ほぼ紀元前二〇〇〇年頃から東北タイからラオス、カンボジアで行われるようになりました。

ベトナムの紅河の肥沃な沖積平野においてイナ作が行われるようになったのも、紀元前二〇〇〇年頃でした。北の方の朝鮮、日本へは紀元前一〇〇〇年頃に水田イナ作が伝播しました。

この他にも、紀元前七〇〇〇年頃から、ニューギニアでは、サトウキビ、バナナ、タロイモ、ヤムイモや葉物野菜を栽培化し始めましたが、これは他にはあまり伝播しませんでした。

また、図1のように、現在のアフリカ大陸の北緯五度から一五度までのサハラ砂漠と熱帯雨林のあいだを横断して伸びる草地(サヘル地帯)と潅木地ベルト(サバンナ地帯)は、アフリカ在来作物の原産地となり、モロコシ、トウジンビエ、シコクビエなどの穀物、ササゲや緑豆などの豆類、ゴマ、オクラ、ヒョウタンなどが栽培化され、紀元前二五〇〇年頃からアフリカ南部に伝播していきました。

図1 世界の農業の起源と伝播(筆者作図)

南北アメリカにわたった先住民の間でも、いくつかの地域で農業が起こりました。まず、中央アメリカでは、紀元前五〇〇〇年頃から紀元前三四〇〇年頃には、インゲンマメ、アボカド、カボチャ、トウガラシ、ヒョウタンに栽培の手が加わっていました。しかし、トウモロコシが栽培されるようになった紀元前二五〇〇年頃から本格的な農業が始まったようです。

以上が人類が農業を独自に始めた地域で、その他は農業が伝播してきて農業が始まったと考えられています。

※本記事は、2021年11月刊行の書籍『劇症型地球温暖化の危機』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。