明るくて会話も楽しい綺麗なこの女性を、一体どんな人が射止めるんだろう。逆にこの人は、相手の何を見て決めるんだろう。ちゃんと目が見える私達は、何を見て人の価値を決めているんだろう。窓の横に置いてある、よく育った観葉植物を眺めながら、佳奈はそんな事を考えていた。

「私、逃げてばっかりだったな……」

佳奈は、独り言のように呟いた。炭酸を一気に飲んだみたいに、何かが胸につっかえている感じだ。

「いいんじゃないかな? 逃げたって。逃げ道も必要よ。ただ、逃げ方を間違えてそれまで助けてくれていた人をがっかりさせないようにしないとね」

自分のモヤモヤを包み込む、優しい里香の言葉はいつまでも聞いていたい。

誰にも干渉されたくないと逃げて、でも誰かに甘える勇気もなくて、自分が傷つかないようにしてきた行動は、どこで選択ミスをしたのだろう。

なぜだか急に、優香や真里奈、茜に会いたくなった。

もう二度と取り戻せない時間を思い、悔しさと切なさで少しずつ目の周りが熱くなるのを、佳奈は瞬きで誤魔化した。